京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。

フィロソフィーに寄り添い育つ庭。
―ババグーリ 京都―

 

 明治 (1884)年に建てられた京町家が『ババグーリ 京都』として生まれ変わったのは2016年のこと。柱や梁、表の格子建具や庭の景石など、多くのものを残し改装された町家は、自然を壊すことなく丁寧な手仕事で作られたものだけを扱うブランドのコンセプトを体現している。
 景石を残し苔を敷き詰め、馬酔木と白椿を植えた庭をデザインしたのは代表の松浦秀昭さん。ミニマルな苔庭は、いかにも京町家らしいものだった。ところが苔は思いどおりに育たず、幾度か植え替えたのちに断念。下草とシダを植えたところ、すくすくと育ち野趣を備えた景色をつくり出した。
「ブランド創設者のヨーガン・レールの終の棲み家、石垣島の家もオオタニワタリやシダが生い茂り、家を覆っています。この庭にシダがうまく定着したことに縁を感じます。都会の喧騒にあっても大自然に抱かれるようなスタイルを提案するババグーリ。庭がどう育つかも楽しみです」
 研ぎ出しで仕上げた床の先に広がる庭。京都とブランドとが融合する景色をもたらしている。

   

2016年11月オープン。日々の暮らしにあるとよい服や家具、雑貨などを扱う。

『ババグーリ 京都』
京都市中京区姉小路通堺町東入ル大阪材木町686-2
075-254-8327
11時〜19時
無休

photo : Yoshiko Watanabe illustration : Junichi Koka edit & text : Mako Yamato