東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県大槌町に、「大槌伝承の館」がオープンした。研究者と遺族が共同で館長を務める民間施設で、「震災を伝え、学び、集う場」として活用される。

 伝承の館は、町役場の向かいにあり、展示・集会場のプレハブと、住田町から移設した木造仮設住宅をつなげた計90平方メートル。震災当時の写真を中心に、復興途中やかつての町の様子も含め、200点以上を展示している。旧庁舎など今はない震災遺構を遺族が描いた版画や、関係図書などの資料もある。

 この場所には震災前、同館の名誉館長になった小笠原弘子さん(85)の自宅があった。津波で流された跡地にプレハブを建て、クラウドファンディングで集めた資金で仮設住宅を移築し、小笠原さんが主宰するフラダンス教室の練習場所に使っていた。

 それを、震災直後から被災者の声を聞き続けている麦倉哲・岩手大名誉教授(68)が購入。震災で両親や兄らを亡くし、「大槌語り継ぐ会」を主宰する倉堀康さん(40)と共同館長になり、語り継ぐ会が運営する。

 6月22日のオープニングセレモニーであいさつに立った住民からは「本来なら行政が責任を持ってこういう施設を造るべきだ」などと話した。出席した町の担当者は「協力してやっていきたい」と述べた。

 23日には、防災士の倉堀さんが災害に備える講話をしたり、図上訓練をしたりした。倉堀さんは「みんなでつくりあげた場所。震災を忘れず、減災にもつなげたい」。麦倉さんは「資料をもっと集め、犠牲者の人となりがわかるような展示を増やし、語り継ぐ場にしたい」と来館を呼びかけている。

 今後は、希望者に予約制で公開し、当分は無料で場所を貸す。連絡は倉堀さん(090・5591・5776)か麦倉さん(090・6713・5858)へ。(東野真和)