【大阪】豊能町は27日、町の事業で財源として見込んでいた企業からの寄付金が納付されず、事業を進めた前町長に約3900万円を請求するよう求めた町監査委員の勧告について、請求しないと発表した。町は「勧告で指摘された内容に疑義があるため」と説明している。

 町によると、2022年度に国の交付金を活用して町民向けにデジタル関連のサービスを提供する「スマートシティ事業」で、IT企業などで構成する一般社団法人と業務委託契約を結んだ。事業費の半分にあたる約1億9500万円を、法人の代表理事が社長を務める企業が寄付金で支払うことになっていた。しかし、22年度末までに6千万円しか寄付されず、1億3500万円は納付されなかった。未納分は新型コロナウイルスの臨時交付金を充てて賄った。当時の塩川恒敏町長は23年3月に退任した。

 寄付金の未納を巡り、住民から監査請求を受けた町監査委員は今年3月、塩川前町長に財務会計上の違法行為があったと認定。上浦登町長に、一般財源から支出した約3900万円について前町長に賠償請求するよう勧告した。これに対し、町は「違法性を認定すれば国の交付金への影響も懸念される」として、請求しないことを決めた。

 企業には寄付の支払いを求める文書、前町長には責任を果たすよう求める文書を24日付で送付した。今後、法的措置も検討するという。

 監査請求した住民団体の寺本勉代表は「勧告通りに請求するよう、町を相手に住民訴訟を起こす準備に入る」と話した。

 総務省によると、地方自治法では、監査委員の勧告に法的拘束力はないが、町長は勧告内容を尊重する義務があるという。22年度に全国で出された住民監査請求650件のうち、勧告が出たのは3・2%の21件しかない。今回の監査請求に関わった谷次郎弁護士は「第三者性の高い監査委員による判断は重く、勧告は尊重するべきだ。町の判断は監査制度をないがしろにするものだ」と話す。(田中祐也)