春の京都非公開文化財特別公開(京都古文化保存協会主催、朝日新聞社特別協力)にあわせ、石清水(いわしみず)八幡宮(京都府八幡市)で12日、国重要文化財の古文書「大宰府符」が公開される。源氏物語を書いた紫式部の夫、藤原宣孝(のぶたか)の自筆の署名が残る。今まで公開されたことはほとんどなかったという。

 八幡宮によると、大宰府符は、平安時代の992(正暦3)年に筑前国の筥崎宮(はこざきぐう)塔院の要望を受け、役人による土地調査の停止を大宰府が宣孝に命じた公文書。宣孝は筑前守だった。

 その後、京都に戻った宣孝は紫式部と結婚した。当時、八幡宮が筥崎宮を管理していた関係から、八幡宮に大宰府符が保管されていた。この文書の末尾に宣孝の署名が確認できるという。

 12日は、江戸時代前期から中期に書かれた八幡宮所蔵の源氏物語の写本全54帖(じょう)のうち、八幡宮に関係する第22帖も初公開する。玉鬘(たまかずら)が参拝した社として八幡宮が登場する。

 12日は八幡宮の特別公開の最終日で、午前10時から権禰宜(ごんねぎ)の田中博志(ひろし)さん(44)が「石清水八幡宮に伝わる古文書と源氏物語」と題して講演する。田中さんは「大宰府符は宣孝の自筆の署名が残る唯一の史料とみられる。これほど古い古文書が公開されることはほぼなく、貴重な機会だと思う」と話している。

 講演は特別公開の拝観者が対象。特別公開の拝観料は大人1千円、中高生500円。問い合わせは京都古文化保存協会(075・451・3313)。(西崎啓太朗)