オーストラリア大陸最高峰のRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ第4戦『ボッシュ・パワーツールズ・パース・スーパースプリント』が5月17〜19日にバルバガロ・レースウェイで開催され、このオフ期間にも精力的に空力開発に取り組んだGen3規定フォード・マスタングが躍進。チャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/シボレー・カマロZL1)とキャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)の陣営内エースがともに予選最速を記録するとともに、フォードに2024年初勝利をもたらしている。

 北米大陸NASCARへの挑戦者が続々と名乗りを挙げ、世界的なGT&ストックのドライバー輩出に関してさらに実績を積み重ねつつあるシリーズだが、西オーストラリア州のトラックではオセアニア地域でGT3の名手としても経験を積むモスタートが、まずはFP最速を記録して主導権を握った。

 明けた土曜最初のフリープラクティス(FP)こそ、今季より名門トリプルエイト・レースエンジニアリング(T8)に移籍した選手権首位ウィル・ブラウン(レッドブル・アンポル・レーシング/シボレー・カマロZL1)が、来月に迫ったNASCARカップシリーズのデビューに向け気合いの籠ったドライブで僅差のトップタイムを奪うも、予選では一転してフォード陣営が先行。僚友ライアン・ウッド(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/シボレー・カマロZL1)を従えたモスタートがポールポジションを獲得し、WAUが最前列を“ロックアウト”する展開とした。

「今週末にコースに出て以来、クルマの調子は本当に良かった」と手応えを口にしたモスタート。

「まだ各セッションのシークエンスを学んでいる状況だが、最後のセッションではうまくいったと思う。ほんの少し調整するだけでマシンをウインドウに収めることができたんだ。チームとしても2台がフロントロウに並んだことは写真的に素晴らしいことだけど、週末のレース後にもっと良い写真をコラージュできたら最高だろうね」

 迎えた55周スプリントのレース1は、オープニングラップのターン2で一時は僚友の先行を許したモスタートだったが、冷静なドライブで15周目にリードを取り戻し、そこからスパート。背後では4番手発進だったブラウンがピットウインドウを経て2番手を奪取し、最後の表彰台スポットを掛けウッドとウォーターズが熾烈な同門バトルを繰り広げる。

 その雌雄は最終コーナーで決し、アウト側からオーバーテイクに成功した北米帰りのウォーターズが滑り込みでポディウムを手にすることに。その前方で悠々と首位クルーズを決めたモスタートは、2022年の『アデレード500』以来となる自身通算22勝目をポール・トゥ・ウインで飾り、フォード陣営に昨季最終戦以来となる2024年初勝利をプレゼントした。

「長い間、これが欲しかったんだ」と安堵した様子で振り返った勝者モスタート。「チームにとって初、そしてフォードにとっても今年初めての勝利だし、ここパースでそれを達成できて非常にエキサイティングだ。僕らは皆勝ちたいと思っているが、僕にとっては少し時間が掛かってしまったね」

■不運なペナルティで連勝ならず

 明けた日曜レース2に向けた予選では、この日のプラクティスも最速で走り出したモスタートに対し、陣営内のウォーターズが逆襲。上位4台が0.08秒差という僅差の勝負を制し、今季3度目のポールポジションを手にした。

「トップ4台の間は非常に僅差だ。それもあって、今日はポールポジションを獲得でき大満足だ。昨日もクルマは速かったが、チャジー(チャズ・モスタートの愛称)に勝つには充分でなかった。でもティックフォードのクルーたちがわずかひと晩で魔法をかけ、僕のクルマのスピードを上乗せしてくれた。それがレースにも反映されることを願っている」とウォーターズ。

 しかし、そんな気合いも空回りしたか。オープニングラップでホールショットを奪ったまでは良かったものの、ターン7でオーバーシュートしたポールシッターはリードを失い、そこからは前日のウイナーがレースを支配する展開に。

 だがそのモスタートにも災難が降り掛かり、ルーティン作業のピットアウトでトーマス・ランドル(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)に対するアンセーフ・リリースの裁定を受け5秒加算ペナルティを課されてしまう。

 勝利を確実にするべく背後のウォーターズと充分なギャップを築こうとしたレースリーダーだったが、チェッカー時のマージンは約2.5秒強と連勝には届かず。ペナルティの恩恵も得たウォーターズが待望のシーズン初勝利を収めた。

「今年は本当に最悪なスタートだった。今週末いくつかのトロフィーを獲得し、こうしてレースに勝つことができて最高だ」と、昨年11月のアデレード以来となる勝利を飾ったウォーターズ。

「1周目のターン7では何が起こったのか分からない。コース上に何かがあったのかどうかは定かじゃないが、そこからは全開だった。最後はクルマが軽くなって首位との差を縮めることができたし、明らかにマスタングは速かった。でも5秒ペナルティのチャジーには不運だったね」

 最後の3位表彰台には、同じくランドルとの3番手争いで接触したとして5秒ペナルティを言い渡されながら、ポジションを確保するのに充分なギャップを築くことに成功したブラウンが連続ポディウムを確保。僚友ブロック・フィーニー(レッドブル・アンポル・レーシング/シボレー・カマロZL1)に対し、チャンピオンシップのリードを136ポイントへと拡大している。

 続くRSC第5戦はシリーズ名物イベントのひとつでもある『ダーウィン・トリプル・クラウン』が、6月15〜16日にヒドゥンバレー・レースウェイで争われる。