フジテレビを去年退職した石本沙織アナ。コロナ禍の直前に逗子に移住し「まるで昭和」と話す現在の生活と「白い粉に驚いた」という海の街ならではのトラブルもあるそうです。

海や自然に囲まれる生活への憧れは20代後半から

── 移住について考え始めたのはいつ頃からでしたか。

石本さん:先輩の大橋マキさんが葉山に住んでいて、本なども書かれていますが、海や自然に囲まれる生活にはずっと昔から興味も憧れもありました。番組で担当させてもらったコーナーで、アーティストのキマグレンが当時、逗子海岸で海の家ライブハウスを運営されていたのを取材する機会がありました。

石本沙織さん次女と逗子の海岸で砂遊びをするリラックスムードの石本さん

都内から1時間かからずに行けて、海が近いとても静かな場所でした。江ノ島あたりは行ったことはあったのですが、逗子を訪れたのはそのときが初めてで。「いつかここに住めたらいいな」と思いました。20代後半のときでした。

── コロナ禍で移住する方が増えましたが、だいぶ前から思っていたんですね。

石本さん:そうですね。でも、具体的にではなく漠然とです。その後は、仕事で多忙な日々を送りながら結婚して、2人の子どもを出産して。マンションに家族4人で住んでいたのですが、子どももだんだん大きくなって手狭になってきました。次はどこに引っ越そうかと思ったときに、このまま都心のマンションで子育てをし続けるイメージがあまり湧いてきませんでした。

夫婦ふたりのときはマンション生活も心地よかったのですが、娘をベビーカーに乗せて家の近くの狭い歩道を歩きながら、ふと「これでいいのかな」と思ったんです。ビルに挟まれているので、上を見上げても空が狭い。私は富山出身なのですが、自分が生まれ育ったような環境で子どもを育てたいと思いました。

石本沙織さんご自宅「癒される!」自宅テラスで朝食をいただくことも多いそう

先に逗子に移住した友人が2人いたので、家に遊びに行って、一緒にバーベキューなどをしていました。「都内に仕事に行くにも、逗子は始発だから電車も座れるよ。京急とJRの2路線あるから、どちらかが止まっても大丈夫!」という話を聞いて、なるほど!と。子どもが小学校に上がる前のタイミングで、思いきってあのとき思い描いていたことを実現させようと思いました。今から2019年の12月、長女が年中のときに逗子に引っ越しました。

── コロナ禍の直前ですね。

石本さん:タイミングとしてはよかったと思います。「コロナ禍で、あのままマンションに家族4人でいたら、私たち行き詰まっていたよね」と夫と話をしています。地元住民は許可されていたので、海岸に子どもと一緒に行って、のびのびと過ごしていました。

その頃、夕方のニュース番組の担当になり、帰りが遅めになるので娘たちのことが心配だったのですが、夫がリモートワークで家にいられたのもありがたかったです。移住には勢いもありましたが、何かに導かれたようにも思います。

── 旦那さんも移住には前向きだったんですか。

石本さん:いえ、実は最初は難色を示していました。私も結構、プレゼンをしたんです(笑)。逗子に住んでいる友人たちからも「仕事のオンと、オフの切り替えができていいよ」というふうにプッシュしてもらいました。最終的に夫も納得して移住したのですが、むしろ今では夫の方が楽しんでいます。サップのボードも買ってマリンスポーツも楽しんでいますし、ゴルフ場も近いので、ご近所さんと一緒にゴルフに出かけることもあります。

逗子海岸夏を満喫!海辺で花火をする娘さん

── ご近所づき合いは、結構あるんですか。

石本さん:まるで昭和のような、子どもたちがピンポンなしで家に入っても大丈夫というような関係性が構築されています。子ども同士も仲がいいですし、家族ぐるみのおつき合いが増えました。これは、都内に住んでいたときには考えられなかったことだなと思います。私も夫も帰宅が遅くなる時には、放課後からお隣さんに子どもを見てもらって夕飯までお願いできるお宅が何軒かあって、本当にありがたいです。

子どもたちも、近くにすぐお友達がいる環境なので、楽しく遊んでいます。素敵なコミュニティに出会えたことが、移住して1番良かったことです。

── ちょっとだけ誰かの手を借りたいという場面が子育てには多いですよね。

石本さん:都内に住んでいたときは、その少しの時間のためにシッターさんを探していたので、今は本当に助かっています。自然を求めて、子どものために移住したと思われがちかと思うのですが、実は私が子育て環境を求めて移住した、という方が正しいかもしれません。もう少し大きくなったら、都会がよかった!なんて娘から言われてしまうかもしれないですけどね。今のところ家族全員、楽しんで暮らしています。

── いい環境ですね。身近に信頼できる方がいるのは大きいですね。

石本さん:今振り返ってみると、都会でのマンション暮らしをしていた頃は、マンション内に大勢の人が住んでいるのに、知り合いはいませんでした。今は、どこに誰が住んでいるかもわかりますし、挨拶や立ち話をするのも当たり前になっていて。いわゆる昔の井戸端会議がすぐに開かれています。

── とても満喫されているようですが、移住先の生活でのデメリットをあえて挙げるとしたらどんななことでしょう。

石本さん:湿気ですね。「何、この白い粉?」と思ったら革のカバンやコートにカビが生えていました(笑)。海が近いので自転車や車が錆びることは覚悟していたんですが、ここまで湿気が多いことは知りませんでした。これからの時期は、除湿剤などを家中に置いて対策しなきゃと思っています。これは海の近くならではの悩みかもしれませんね。

デメリットというほどではないですが、雑草のたくましさにも驚いています。この時期は特に、あっという間に雑草が伸びて、抜いても抜いても1週間経ったらまた出てくるんです。

石本沙織さん退職時に後輩が企画してくれた卒業コンサートでの集合写真

── 雑草魂と言われるだけありますね。

石本さん:生命のパワーを感じながら、「君たちすごいね!たくましいね!」とか言いながら雑草抜きをしているんですけど(笑)、この時間も結構好きです。ラベンダーもたくさん育っているので、剪定しながらいい匂いに包まれて癒されています。