F1の来季ドライバー市場が、例年よりかなり早く動いている。今季開幕直前に発表されたルイス・ハミルトン(39)=英国=のメルセデスからフェラーリへの移籍が発端で、引っ張っているのは中団のステークを運営するザウバーだ。2026年からのアウディへの“衣替え”に先駆け、フェラーリのカルロス・サインツ(29)=スペイン=と、ハースのニコ・ヒュルケンベルグ(36)=ドイツ=の両取りを画策。他チームよりもいち早く、5月中旬までの契約締結をもくろんでいる。(ルイス・バスコンセロス)

◆ボッタスは決断待ち?

 例年なら夏休み前の7月に決着するドライバー市場を、ザウバーが早くから引っかき回している。ヒュルケンベルグに来季から2年間、サインツには4年間の長期契約をオファーし、5月中旬までの返答を要求しているという。

 ステップアップとなるヒュルケンベルグはともかく、開幕から好調で、評価がうなぎ上りのサインツは返事を引き延ばしたいはずだ。父カルロスSrがアウディで今年のダカーラリーを制している縁はあるものの、まずは強豪チームへの移籍を模索したいところ。ザウバーが保険と考えるアルピーヌのエステバン・オコンと、現チームで2022年からエース格のバルテリ・ボッタスは、サインツの決断を待つ必要がありそうだ。

 サインツの移籍先候補のうち、レッドブルへの扉は急速に閉まりつつある。クリスチャン・ホーナー代表を巡るスキャンダルに伴い、契約破棄すらにおわせていた現王者マックス・フェルスタッペンの動向は一気に沈静化。セルジオ・ペレスも快調に今季を滑り出し、契約更新をつかみ取りそうな情勢となった。

 もう一つの選択肢だったメルセデスは、トト・ウルフ代表が育成選手のアンドレア・キミ・アントネッリにご執心で、初めてのF2挑戦を夏休みまで見守る方針だ。一方、フェルスタッペンのレッドブル残留が濃厚となったため、アストンマーティンもサインツ獲得競争に参戦。いずれにせよ、サインツがザウバーの求める期限内に返答する可能性は低い。

◆騒がせたベッテルは…

 他に市場を騒がせたのが、4度のF1王者セバスチャン・ベッテルだ。ハミルトンが自身の後任に“推薦”し、ウルフ代表も「決して除外できない」と語ったものの、現実味は乏しい。現役終盤から環境問題に熱心に取り組んでおり、3月末にポルシェで世界耐久選手権(WEC)のテストに臨んだのも、その活動の効果的な宣伝のためとみられている。