WEC 第2戦 イモラ6時間 世界耐久選手権 決勝 21日

イモラサーキット(イタリア)

 予選6番手に沈んだトヨタガズーレーシング(TGR)の7号車が、巧みな戦略を駆使して大逆転し、待望の今季初勝利を挙げた。チーム代表も兼務する小林可夢偉(37)は表彰台の中央に上り、「本当に驚くべき勝利」と大喜び。平川亮(30)の同8号車も、8番手スタートから5位までポジションを上げた。2、3位にはポルシェペンスキーの6、5号車が続いた。予選トップ3を独占した地元のフェラーリ勢は、ポールからスタートした50号車の4位が最上位だった。

巧みな戦略&最高の走り

 シリーズ5連覇チームの底力だ。TGRはチームの巧みな戦略とドライバーの踏ん張りがかみ合い、苦戦が続くクルマのパフォーマンスをカバー。可夢偉も乗り込む7号車が大逆転を果たし、表彰台の中央で誇らしげに歓喜のシャンパンを振りまいた。

 スタートを担当したマイク・コンウェイは「ピットクルーの作業は素晴らしく、戦略もこれ以上ないほど良かった」と満足そう。2番目に走ったニック・デフリースも「全ての戦略が的確で、全てのスティント(ピットイン間の走行)を力強く走れた」と胸を張った。

 まさに技ありだった。コンウェイは抜きづらいコース特性を考え、ピット戦略を駆使して3番手に浮上。後を受けたデフリースはフェラーリ2台を激しくプッシュし、フルコースイエロー明けの再スタートで1台を仕留める。もう1台がピットに入ったことで、トップに立った。

ポルシェの猛攻はね返す

 圧巻は最後を担当した可夢偉だ。急な雨でぬれた路面を晴れ用タイヤで走る苦境を強いられたうえ、最終盤はポルシェから猛プッシュを受ける。ゴールまでの30分間は1秒以内で攻め続けられたが一度もすきを見せず、「最後は燃費の心配があったので、燃料セーブに全力を尽くした」と涼しい顔。大接戦をガレージで見守ったコンウェイは「すごかった。猛烈なプレッシャーをはね返したね。走っていた彼より、見守った僕の方が心拍数が高かったぐらいだよ」と、おどけながらチームメートをたたえた。

 3月の開幕戦カタールでは、トヨタとして6年ぶりに1台も表彰台に上れない悔しさを味わった。自らの激走で見事に雪辱した可夢偉は「最速のクルマではなかったが、チームが素晴らしい仕事を、ニックとマイクも最高の走りをしてくれた」と総括。チーム代表の顔に戻り、全員でつかみ取った勝利を強調した。