【福留孝介の目】◇1日 中日1―12DeNA(バンテリン)

 中日は初回でもはや白旗を揚げざるを得ないような惨敗だった。前回まで防御率0・77だった先発の涌井がいきなり6連打されて、2死を取ったあとにも連打を食らい、途中降板した。牧にはシンカーを左越えに3号3ランされるなど9失点。中田を休養させた試合でもあり、あまりに重すぎた。

 本紙評論家の福留孝介さんは「まさか涌井が。目を疑う光景でした」と語る。粘り強さも発揮できないまま、マウンドを降りた。「これまでの涌井なら安打されても粘って後続を断ってきたのに、まったく粘りの投球ができなかったですね」

 先頭の桑原には初球の外角直球を右前安打されて、2番の蝦名には直球のあとのスライダーを中前安打された。3番の佐野は簡単に追い込んだ後、外角への変化球で泳がせながらも、中前へ落ちる先制タイムリーとなってしまった。上林のスライディングキャッチもわずかに及ばなかった。

 福留さんは「捕りきれない場所へ落ちたのも球に力がなかったから」と指摘する。4番の牧には初球シンカーを左越えに3ランされた。

 「自分が信用できる球種のないまま打ち込まれた感じでした。DeNAにすれば、制球の良い涌井に対して積極的な打撃が奏功したと言えます」

 先発の涌井が初回途中でノックアウトされてしまえば、当然ながら中継ぎにシワ寄せが来る。2番手の梅野は1回途中から登板し、イニングをまたいだ。2回は三者凡退も、3回に4安打を浴びて3失点。序盤の12失点は、反撃にはあまりに酷すぎる点差である。

 「こういう展開では集中力を切らさずに打席に入ることが大事」と福留さん。大敗のなかでも代打で石垣が左翼線へ二塁打を放った。「なかったかもしれないチャンス。1打席目でチャンスをつかんだから、次の打席をもらえる。もらったチャンスで結果を一つずつ積み重ねていけばプラスになる」と、その価値を見いだす。それは細川にも言えることだろう。ここ6試合で4本塁打となるリーグトップの7号を石田健から左越えに放り込んだ。カウント2―2からの140キロストレートを捉えた一発だった。

 「こういう展開だからいつもと配球は違う。普通はあんな真っすぐはない。落としてくるはず。ただ、しっかりと集中して打席に入っていたからこそのホームラン」。試合展開からすれば焼け石に水のアーチとはいえ、福留さんはたたえた。

 休養を与えられた中田に代わって、一塁で今季初スタメン起用されたのは石川昂だ。左腕の石田健に対して、2回の第1打席は外角低めのチェンジアップに空振り三振。4回の第2打席は高めのスライダーに一飛。6回の第3打席では甘く入ってきたスライダーを左前へクリーンヒットにした。

 「同じ球種を狙ったのかどうかは分からないけども、しっかりと捉えてみせた。あれを本塁打にしてほしいと思う向きもあるかもしれないが、今は欲をかく必要はない。どうしたら打球が上がるのか、これからの練習で見つけてもらいたい」と福留さんは話した。