【大塚浩雄のC級蹴球講座】

◇6日 J1第12節 柏1―2鹿島(三協フロンテア柏)

 鹿島が3連勝で3位に浮上した。前半4分にあっさり先制し、その後何度もチャンスをつくりながら決めきれず、後半20分に追いつかれ、さらにPKの大ピンチ。これをマテウスサビオが外してくれたおかげで息を吹き返し、後半追加時間2分にチャブリッチが決勝ゴールを決めて振り切った。

 苦しい試合をものにしたポポビッチ監督は「失点する場面まではしたたかに賢く、共通理解を持ってということが、今シーズンの中で一番できた試合かもしれない。試合をしっかりコントロールできていた。苦しい試合だったが、全員で勝ち点3を取ることに成功した」と振り返った。

 前半4分の先制ゴール。佐野が浮き球をヘッドで仲間につなぐと、そのリターンを佐野が縦にスルーパス。受けた名古がドリブルで相手DFを振り切り、流し込んだ。ボールを奪ってから縦に速い流れるような攻撃。その後も鹿島は試合を支配し、何度も好機をつくった。

 2016年以来、リーグ優勝から遠ざかっている鹿島。最近は5位、4位、4位、5位とトップ3にも入れない状況が続いている。鈴木優磨を軸にロングボールを多用して個の力で打開していく、ゴリゴリのパワーサッカーになっていた。

 今季から就任したポポビッチ監督は「オーガナイズ」という言葉をよく使う。「組織化する」。個の強さに組織的なサッカーを融合する。ベンチ入りの選手を含め、いかにしてチームとして機能し、勝利をつかみ取るか。

 今季の鹿島はダブルボランチの佐野と知念が攻守にわたって軸となり、相手がボールを持つと4バックと連動してボールを奪い、さらに前線にいいボールを供給する。これに両サイドバックも加わる攻撃は多彩だ。佐野は日本代表にも選出され、注目を集める存在にもなったが、この日も攻守両面でいい仕事をしている。

 しかし後半、強烈な向かい風にさらされ、さらにゴール裏の柏サポーターの圧力を受けて押し込まれると、後半20分に追いつかれ、同27分にはハンドでPK献上。これをしのいで息を吹き返すと、後半追加時間2分、今度は力で決勝ゴールをねじ込んだ。

 GK早川のゴールキックをDF濃野がヘッドでつなぎ、鈴木が一気のロングパス。途中出場のチャブリッチが抜けだし、決勝ゴールを決めた。縦パス3本で90メートル運ぶ、まさに個の力業。これまでも鹿島の強みだった個の力に、トレーニングと試合を重ねるごとに組織力が加わり、しぶとく勝つサッカーが浸透してきた。

 意外だったのが、3連勝しても選手たちに浮かれた様子がないこと。3位浮上を聞かれた鈴木は「あんまり順位表見てなくて、勝ち点とかも気にしてない。内容的には改善すべき点もあったし、得た収穫もあった。もっとチャンスがあったので、こういうのを決めていかないと、のちのちツケが回ってくることを学ばないといけない。反省点です」と冷静に受け止めている。先制点をアシストした佐野も同様のコメントを残した。

 もともと力も伝統もあるチーム。組織的なサッカーがさらに浸透すれば、最後まで優勝争いに絡んでくるだろう。

 ◆大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、94年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)。