◇渋谷真コラム「龍の背に乗って」◇24日 中日2−5ヤクルト(バンテリンドームナゴヤ)

 試合に流れというものがあるのなら、確かにあの時は中日に傾いていた。村上の2ランで追う展開。打ちあぐねていたサイスニードが、突如乱れたのが7回だった。荒れ気味ながら無四球だったサイスニードが細川、カリステに連続四球を与えて無死一、二塁。ここで伊藤投手コーチがマウンドへ向かい、川口球審もその輪に加わった。整備スタッフが呼ばれ、マウンドに土が入れられた。

 サイスニードがクレームをつけたのは、左足を踏み出す付近の土の状態。天候には左右されず、硬さでは定評のあるバンテリンドームナゴヤでは、試合中の整備は極めて珍しいことだった。

 「これは久々に(バンテリン)ドームに帰ってきた時のあるあるなんですよ」

 このシーンを語るのに、岩瀬仁紀さん以上の人はいない。何せリリーフだけで1001試合も登板したのだから、サイスニードの不満も簡潔に説明してくれた。

 「しばらく(遠征で)空けていると、変に固まっているんですよ。終盤だからじゃなく、1回の涌井も気にしてたでしょ? そこから終盤に差しかかると滑りも出てくるし、人(他の投手)も入ってくるとよけいに悪くなる。僕は2、3試合たって、なじんでから投げるのが良かったから」

 バンテリンでの試合は8日ぶり。岩瀬さんの見立て通り、直前(7回表)に投げた橋本との相性も、サイスニードとは悪かったようだ。

 「彼(橋本)は僕と同じところに踏み場があって、変な掘れ方をしていて、ちょっと滑っていたんだ。あんなのは初めての経験。カリステにも頭に当てそうな球を投げてしまい、危険だったから(審判に)言いました」

 もちろん責任はサイスニードにも橋本にも、もちろん球場にもない。それが流れ。ささいなことで、中日に傾いた。しかしここで追いつけず、8回も勝ち越せず。マルティネスの失点はあきらめがつくが、風に乗りきれず、流れをつかみきれなかった末の敗戦には悔いが残る。