FNNプライムオンラインは4月30日、北朝鮮当局が流している「韓国ドラマを見たり流布したりしても、正直に告白すれば許す」というキャンペーン映像を報じ、「『韓流弾圧』ついに限界か」と伝えた。

北朝鮮は2020年12月、反動思想文化排撃法を制定して韓流コンテンツの大々的な取り締まりを展開し、違反者を処刑したり、長期の懲役刑に処したりと、極端とも言える行動を続けてきた。

それが、ここへきて「自首キャンペーン」を行っている背景には、FNNの指摘するとおり、いくら摘発しても根絶やしにできない「限界」にぶち当たっている面があるのかもしれない。

しかし、北朝鮮当局がどのような手段を駆使しようとも、韓流の根絶が可能であるとは筆者には思えない。

その理由は、単に北朝鮮国民の需要が強いという以外にもいくつかあるが、韓流コンテンツの「密売」が儲かる商売になっているという事実もそのひとつだ。

たとえば2年ほど前、金正恩総書記が旗売り役となって造成した、陽徳(ヤンドク)の温泉リゾート施設でこんな事件があった。

施設は2020年1月にオープンしたのだが、時を同じくして世界的な新型コロナウイルスの大流行が始まったのは周知の通り。リゾートは閑古鳥が鳴く事態となってしまった。

困窮した従業員らが手を出したのが、韓流コンテンツの密売だった。施設の案内管理員6人は、首都・平壌と陽徳を結ぶ送迎バスを使って、韓流ドラマや映画のコンテンツを運び、地元住民に販売していたのだ。

ところが、これが当局に発覚。逮捕者は最終的に26人にも上った。彼らはコンテンツの入手、運搬、販売を役割分担して行う「密売組織」として活動していたという。

韓流コンテンツの密売は、困窮した彼ら26人と、おそらくはその家族までが食べていける儲けを出していたのだろう。ちなみに、彼らがどのような運命を辿ったかは詳らかでないのだが、北朝鮮当局は韓流コンテンツの単純所持や視聴よりも、流布罪にはるかに重い刑罰を与える。彼らが肉体的、少なくとも社会的に葬られてしまったのは確実だろう。

しかし、これと同様の密売事件はその後も発覚している。いかにリスクが高くとも、必要とするリターンがある限り、そこに手を伸ばす人々はいるものなのだろう。