4月14日、木村拓哉(51)が自身のInstagramに〈happy birthday!!〉というメッセージとともに、妻である工藤静香の写真を投稿したことが話題となっている。SNSにおける方針転換は独立への布石にも見えて……。【冨士海ネコ/ライター】

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 木村拓哉さんからは「あえて」というこだわりを感じる。求められる型から、「あえて崩す」「あえて外す」ことを狙っている人。イメージ商売のアイドルなのに、あえてヤンチャな言葉使いをしちゃう俺。歌うだけでいいんだろうけど、あえてギターも弾いちゃう俺、妙なアドリブを入れちゃう俺。「ビストロSMAP」でも「天ぷらって天つゆで食うと思うんすけど、あえて塩で食べてください」って言いそうな感じというか。

 木村さんにとっては、今回も「あえて」なのかもしれない。今月14日、自身のInstagramのストーリーズに「happy birthday!!」というメッセージとともに、イチゴパフェ越しにほほ笑む妻・工藤静香さんの写真をアップ。これまではバラの花束の写真などで妻の誕生日を祝福してきたが、今年は工藤さんの姿がしっかり分かる内容だったため反響を呼んだ。表立って家族のことを公に話すことも少なかっただけに、一体どういった風の吹き回しかと戸惑うファンもいるようだ。

 不倫ニュースが横行しがちな芸能界で、おしどり夫婦は素晴らしいこと。木村さん夫妻も、来年で結婚から25周年を迎える。

 ただ、父としての顔は見せても、夫としての顔は出さない。それが結婚を許された旧ジャニーズタレントたちの不文律だったはずだ。相手が同じ芸能人であろうと、家庭にまつわる情報発信には慎重さを求められてきた。

 例えば二宮和也さんや岡田准一さんはタイミングの悪さでケチがついた印象があるが、人気絶頂時にできちゃった婚を発表した木村さんこそ最もいろいろ言われ続けた人だろう。それだけに、今回のSNSにおける方針転換は、「あえて」にしてはだいぶ振り切ったように見える。ちなみに二宮さんも岡田さんも退所して事務所を立ち上げており、木村さんもいよいよ独立に向けて動き始めたとみられてもおかしくはないのではないだろうか。

「何をやってもキムタク」と言われる役選びの共通点 「アーティスト」である妻へのコンプレックス?

 25日からテレビ朝日で主演ドラマ「Believe―君にかける橋―」が始まった木村さん。大手ゼネコンの設計部長役として、妻役の天海祐希さんを始め豪華なキャスト陣を率いる座長に。初回平均世帯視聴率は今期の民放連続ドラマでトップ(現時点)となる11.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)という好スタートを切った。

 木村さんは四半世紀近く主演を務め続けてきたが、「何をやってもキムタク」と演技力をたたかれることも多かった。代表作「ロングバケーション」でのピアニスト役を始め、検事や美容師にパイロット、医者に警察官、料理人とさまざまな役柄を演じてきたにもかかわらず。

 演技が同じとは思わないが、役柄には共通するところがある。専門職の役ばかりなのだ。「型破り」な主人公を演じるには、所作や制服、専門用語など、「型」のある職業でないと外しようがないからではないだろうか。

「あえて」「型にはまらない」というこだわりの強さは、確かに唯一無二の存在感とストイックな気迫を木村さんにもたらしたが、ナルシスティックで独善的な「何をやってもキムタク」イメージにもつながってしまったように思う。

 1を1000にすることはできるが、0から1は生み出せない。一方、妻である工藤さんは二科展に入選する絵画の腕前を持ち、自ら作詞もしてヒット曲を連発。アンチにたたかれがちだが手料理にも独特のセンスがある。まさに演じてきた職人たち同様、「クリエイター」を地で行く妻に、木村さんも一目置いているのは確かだろう。

 SMAP解散の黒幕説さえ出た工藤さんの影響力は絶大だ。木村佳乃さんや瀬戸朝香さん、宮沢りえさんなど、旧ジャニーズタレントと結婚した名だたる女優妻たちと比べても、SNSの投稿数もフォロワー数も群を抜いている。最近は芸能界デビューした自慢の娘たちとの日常も垣間見ることができるが、木村家の中で今や「キムタク」は、「脇役」にシフトし始めているのではないかとさえ思うほどだ。

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 ただ、「脇役」シフトは悪いことばかりでもない。家庭でも主役然としているアイドルではなく、良き家庭人としての顔を見せていくことで、恋愛NGだったジャニーズのイメージとの決別を感じさせることができる。ただでさえ「工藤さんのゴリ押し」と白い目が向けられることも多い娘さんたちの前途を、過去の亡霊に足を引っ張らせたくはないだろう。以前「おじさん構文みたい」とバカにされた絵文字だらけでテンション高めの文体も、昨年末からめっきりシンプルになった。あの木村さんが、悪目立ちしないように世間の空気を呼んだのかと思うとちょっとしんみりしてしまう。

 何より目下の問題は、旧事務所の悪評によって起きた降板ドミノを食い止めることだろう。ジャニーズの顔であり、主演しかやらない男という「キムタク」イメージからの脱却には、「脇役に降りる」は最も効果的である。

 長きにわたって、芸能界やヒットチャート、グループ解散の時まで「センター」に立ち続けてきた木村さん。今は家庭でも仕事でも、「センター」ではない場所に勝機があることに気付き始めているのではないだろうか。

 なお木村さんに、朝ドラと大河の経験はない。NHKは紅白などから旧ジャニーズ勢を締め出したが、もし木村さんが独立したならば門戸が開かれる可能性は高いのではないか。「スカーレット」での稲垣吾郎さんや、「ブギウギ」での草なぎ剛さんなど、身近な成功例もある。木村さんだって、どうせ脇に引くならデカい脇役の方がいいだろう。と、工藤さんが折に触れてささやいていそうな気がしてならないのである。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部