朝に新聞の一面を音読

 26日、90歳になった事件リポーターの東海林のり子さん。6年前に夫に先立たれ、現在は関東近郊のマンションで一人暮らしだ。韓国ドラマなど、日々、楽しみを発見しながら、過ごしている。卒寿を迎え、「死ぬのは全然怖くない」と話す。その理由とは。(インタビュー第2回・全3回)

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 ご飯はもう炊飯器で炊かないですね。パックのご飯をいっぱい買っておいて、それを食べています。楽ですよ。バランスよく栄養を考えなければいけない食事は、めんどくさいです。

 近くに住む息子が心配して、「ママ、今、スーパーに来ているけど、食べたいもの買っていってあげる」と連絡してくるんですが、「いらないわよ」って言うんです。家には2、3カ月もつような冷凍ものがたくさんあるから。野菜ジュースとかもあるし。今、一番の悩みは、いっぱいになっている冷凍室をどうするかですね。

 毎日、朝は新聞を音読することから始まります。やっぱり新聞が好き。スマホとかで流れていく文章を読むよりも、新聞が1番いいです。難しい漢字が入っている一面をスラスラ読めないといけないと思って、一面を音読するようにしています。最近の一面は、AIの話が多く出てきますね。

 AIは何でもできちゃうから、怖いのかなと思っていたんですが、やっぱりすごいですよ。私、難聴で補聴器をつけているんですが、最近、AI付きの補聴器というのが出たんです。たぶん、値段が高いと思うんだけど、死ぬまでにAI付の補聴器をつけたい。そのために貯蓄をしています(笑)。

 最近、雑誌を読むと、「がんで死ぬのが怖い」とか書いてありますが、そんなことないですよ。うちにかわいがっていた猫がいたんですが、腎臓を悪くして死んじゃったんです。その時はすごく悲しくてペットロスになりそうでした。

 でも、しばらくして、誰かの本を読んだら、「動物は死ぬという意識がない」「死に対して何も考えない」と書いてあったんです。私は「それだ」と思いました。自分を動物だと思えば、この世の終わりだとか悲しいとか考えずに、スイっといけると思うんです。

宇野千代さんから影響

 死生観で影響を受けたのは、小説家の宇野千代さんです。宇野さんが90代の時に、小豆島のオリーブオイルのCMをやっていたのですが、私がそのCMを引き継がせていただきました。

 当時、宇野さんが「死なないような気がする」と言っていて、その言葉がいいなと思ったんです。私も「死なないような気がする」。だって、いつ死ぬかって考えてもしょうがないから。

 なぜ、宇野さんにそうした強さがあったのかを考えたら、たくさん恋愛していたからなんです。やっぱり男に惚れるっていうのがなかったらダメだと思う。私も韓国ドラマを見て、パク・ソジュンと、もしかしたらデートできるかしらと思ったりしますから(笑)。

 たとえ年を取っても、この人と恋愛できるかもしれないという思いがなかったら、早く死んじゃったと思うんですよね。

 あとは、想像力っていうのは人間にとってすごく大事だと思っています。そのためには、やっぱり本を読んだ方がいい。

 私の場合、刑事モノばかり読んでいいます。事件の仕事をやっていたので、やっぱり刑事モノが面白いんです。大体、捜査一課が出てきますから。

 好きな作家は堂場瞬一さん。シリーズでは、同じ名前の刑事が出てくるんです。だんだん、テーマも新しくなってきて、最近は振込詐欺を扱ったりする。大事なのは、想像力。読んでいる時に、この刑事はどうやって解決するのかを考えるんです。想像すれば楽しくなりますから。想像力を高めるために、本はいつもそばに置いています。

 体力面に関しては、しょっちゅう転んで骨にひびが入ったりしているので、週2回くらい、スポーツセンターへリハビリに行っています。

 リハビリの理学療法士さんって、みんな若い男の子なんです。だから、楽しい。色々、からかったりして……。マスクしているから、みんなかっこよく見えるんです。孫みたいな男の子と会話を楽しんでいます。

「ふたご座の女の子を探しなさい」

「あら、あなた恋人いないの?」と言うと、「いない」と言うんです。そうすると、「バカね」と返してあげる。「どういう女の子がいいですかね?」と聞いてくるから、「ふたご座の女の子を探しなさい」と教えてあげます。私、ふたご座だから(笑)。リハビリだからって、深刻さはないんです。いずれ治ると思っているから。

 行く場所、行く場所によって、なんか楽しいことやってればいい。そうすると1日がすぐ終わるので。85歳を過ぎたぐらいから、ますます人生が楽しくなってきた。それまでは、結構現実的なことを考えたりしていました。

 終活はしていないですね。だってもう勝手に死んじゃえばいいんですから。荷物が多くて、息子が「片付けるのが大変だろうな」とか言うんだけど、もう死んじゃえば、あとは業者かなんかが来て持ってけばいいんですよね。

 90歳になったという実感はあまりなくて、まだ先にいけるなと思っています。このままいけば100までいけるかもしれないでしょ。死ぬ時は死ぬ時だから。死ぬのは全然怖くない。でも、まだまだ知りたいことはいっぱいありますから。毎日1個ずつでも、新しいことを知りたいんです。

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 いつまでも好奇心旺盛な東海林さん。現役のリポーター時代は4000以上の現場に足を運んだ。第3回では事件現場、ワイドショーについて語る。

デイリー新潮編集部