通常の対応方法は……

「週刊新潮」は4月11日発売号で、グループ総売り上げ1兆円超、国内シェア4割を誇るパン業界のガリバー「山崎製パン」の知られざる“体質”を報じた。工場での事故で約10年間に4人が死亡し、商品の「回収事案」が頻発。これらに関する「週刊新潮」の取材に対し、同社広報部門の担当者は笑いながら死亡事故について説明。

 深刻な問題を抱えていることを伝えたわけだが、同社の“闇”はそれにとどまらなかった。

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 食品会社にとって、商品に問題が発覚した場合の情報開示は生命線といえる。文字通り、消費者の生命に直結しかねないのだから当然である。しかし、山崎製パンは……。

 まずは、商品に異物などが混ざってしまった場合の「混入事案」に関して、山崎製パンの元幹部はこう説明する。

「混入で一番やっかいなのは、粉虫ですね。幼虫はフィルターで取り除くことができますが、問題は卵。小麦粉の中に粉虫の卵が紛れていて、フィルターの目を通り抜けてパンの中に入ってしまうのです。

 クレーム対応は若手が行くことが多く、1年で100件以上対応することもあります。お客様のところで商品を回収して代金を支払い、おわびとしてグループ会社のヤマザキビスケットのクッキーをお渡しします。もちろんその際、“現場のほうに衛生管理を徹底するよう注意します”などと説明します」

「人海戦術で購入し、実質的に回収」

“いつもと味が違う”などのクレームが寄せられた場合、それが1件のみであれば購入した客に上記のような対応をして完了。しかし、工場での異物混入が疑われるなどした場合には、

「チェーン本部・店舗に連絡し、営業社員や配送メンバーが商品を正式に回収し、新聞などに社告を掲出するというのが通常の対応方法です。しかし、この方法を取るとコストが多くかかる上、工場の業績にも大きく響くため、できる限り避けようとします」(同)

 それでは、“変な味がする”といったクレームが、同じ生産工程の同じ商品で3件発生した場合はどう対応するのか。山崎製パンの元社員は、そうした時の“対応テクニック”を先輩から伝授されたという。

「先輩はそれを“ダマでの買い取り”と呼んでいました。やり方は至ってシンプルで、クレームが複数寄せられた当該商品がどの店舗に何個納品されているかをまず把握します。それを社員らが一般消費者を装って、一軒一軒店を訪ねて人海戦術で購入し、実質的に回収してしまうのです」

「初動対応の範囲で全部買えるのなら……」

 こうした「通常の対応方法」ではない対処について、山崎製パンの広報部門担当者は「週刊新潮」の取材に対し、こう苦しい弁明をした。

「ダマでの買い取りという言葉は本社では聞いたことがありません。ただ、製品に不具合があるといった情報が寄せられた場合、初動対応として製品をすぐ買いに行く。初動対応の範囲で全部買えるのなら、結果的にそうなることもあると思います」

 これでは、商品に問題が確認されても、バレさえしなければ公表する必要はないと言っているに等しいように思えるが……。

 有料記事【「パンに虫が」「変な味がする」 異物混入を公表せずに納める“悪知恵”を山崎製パン元社員が証言 現場では“中抜き”“送り込み”などの手法が蔓延か】と「週刊新潮」(4月18日発売号)では、これ以外にも関係者の間で「中抜き」「送り込み」と呼ばれている山崎製パンの“問題行為”を含め、食品を扱う同社の憂慮すべき実態を詳しくレポートしている。

「週刊新潮」2024年4月25日号 掲載