昨年、社会問題化したホストクラブの「売掛(ツケ払い)」商法。その返済のために女性客が“路上に立つ”ケースなどが急増し、警察当局も乗り出す事態に。その影響で4月から売掛自体は禁止となったが、水面下では集客のための涙ぐましい“珍商法”が一部のホストクラブで出現しているという。

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「売掛禁止」の実現は昨年12月、ホストクラブが集中する歌舞伎町を抱える新宿区とホストクラブ側が「合意」に達したためという。

「売掛金という名目で女性客に高額な料金を請求して借金を負わせる商法に批判が集中し、行政だけでなく、警視庁も昨年、営業実態を確認するため歌舞伎町のホストクラブに一斉立ち入りを行いました。狭まる包囲網を前に、ホストクラブ側が自主的に“売掛禁止”を新宿区に申し出て、騒動にようやく一区切りがついた」(全国紙社会部記者)

 高額のツケ払いを可能にした売掛がなくなり、歌舞伎町のホストクラブにも“閑古鳥”が鳴いているかと思えば、「4月以降も売上はそれほど大きく変わっていない」と話すのは、歌舞伎町のホストクラブ関係者だ。

「一部の店では客のボトル代をホスト個人が立て替えるなど、実態としての売掛商法が残っている部分もある。ただ個人での立て替えになるので、金額はそれほど高額にのぼらないと聞いています。そんななか、各ホストクラブとも“売掛”に代わる新たな集客法に知恵を絞っていますが、なかには同業者から見ても笑ってしまうものがある」

人気ホストが異例の“接待”

 たとえば4月以降、「初回プレミアム」サービスを取る店が増えたという。

「初めて来た客に、普段だったら付かない指名上位のホストを付ける“初回限定サービス”です。ランキングでトップ10に入るホストは基本、お金をたくさん使ってくれる“太客”以外に付くことはメッタにないが、一方で彼らは客のもてなし方や会話術に長けている点で共通している。店側としては、彼らを初回客に付けることで“トリコ”にし、再訪へと繋げる皮算用も働いている」(同)

 他にも、

「店のなかには客に対して“今度、友達を連れて来てくれたら料金を割り引く”サービスを採用しているところもある。といっても数パーセント程度の割引だそうですが、少しでも通ってもらうために“お得感”を出そうと必死なのでしょう」(同)

 そして極めつけがAmazonのギフト券を配る店が現れたことだという。

「アマギフ1000円」プレゼント

「路上で現物を配るわけでなく、SNSで『アマギフ プレゼント』と謳って客を呼び込んでいるのです。アマギフといっても貰えるのは1000円券が多く、セコイっちゃセコイですが、大抵が“初回(飲み代)無料”とセットでの特典のため、それなりの集客効果はあるようです。ただしタダで飲めて少額のアマギフを貰えるとあって、“本当に一杯引っかけに来ただけの、次回は絶対にない客も多い”とのグチも聞こえています」

 ホストクラブなりに“営業努力”に励む背景にあるのが、“警察の目”に対する警戒心という。

「世間からの風当たりがこれだけ強まると、仮に高額請求した客に警察へ駆け込まれたり、裁判を起こされたりしたら、店側に“勝ち目はない”という空気になっている。売掛の禁止だけでなく、いまではどの店も未成年者の入店は厳しくチェックして拒否の姿勢を徹底。また違法なキャッチ(呼び込み)を使う店もなくなり、警察による介入の余地をなくすことに神経を尖らせているのが実態です」(同)

 それでも各店とも売上が大きく落ち込まない理由は何なのか。

「これまでのお客さんはもちろん、4月以降も新規のお客さんが途切れることなく来店していて、不思議といえばフシギ。イメージ悪化や締め付けが強くなっても結局、ホストを必要とする女性の数は変わっていないのだと思います。やっぱり“ホストクラブはなくならない”と逆に自信を深めているホストも少なくない」(同)

 健全化への道のりはまだ半ばのようだ。

デイリー新潮編集部