“爆弾”は学歴詐称疑惑だけではなかった

 小池百合子東京都知事(71)の任期も残りあと3カ月。そのタイミングでかつての側近の実名告発により再燃した学歴詐称疑惑は、3期目を目指す都知事の選挙戦略に重大な影響を及ぼしつつある。加えて、小池都政下での各種問題も噴出。女帝の座が揺らいでいる。【前後編の後編】

 ***

 前編では、以前から小池氏の学歴詐称疑惑を追及してきた作家の黒木亮氏による「今回の実名告発で、疑惑は決定的なレベルになった」という指摘などを紹介。しかし、彼女が抱える“爆弾”は学歴詐称疑惑だけではない。

 さる都政関係者の話。

「学歴詐称疑惑の隠蔽(いんぺい)に加担した論功行賞からか、小池氏の助勢を得て、都議で小池氏の右腕として知られた樋口高顕氏(41)は2021年に千代田区長に当選しました。その樋口氏と地域住民が今、樹木の伐採をめぐって、激しく対立しています」

 小池氏が認可した東京・明治神宮外苑の再開発事業をめぐる樹木の伐採問題を彷彿させるのだが、

「21年11月ごろに神田警察通りのイチョウ並木が伐採されることを知り、伐採見直しを求める陳情や活動をしてきました」

 そう語るのは「神田警察通りの街路樹を守る会」発起人代表の滝本幾子氏だ。

「区側は議会で、地域住民とは長年議論を重ねてきたと説明。議会は整備案を可決したのですが、実際に議論したのは一部の商店主や町会長だけ。私たち住民はまったく知りませんでした」

 滝本氏ら「守る会」の有志は22年4月から、イチョウ並木の下で座り込み、工事を止めるべく活動を続けてきた。しかし、

「区側が工事区間への私たちの立ち入りを禁じる仮処分を東京地裁に申請。今年3月にその仮処分が認められてしまいました」(同)

 結果、今月に入ってイチョウの伐採が進んでいるのが現状だという。

「区は工事を再開する際には私たちに連絡をすると言っていたのに、その約束もほごにしたのです」(同)

自転車イベントが住民監査請求の対象に

 小池都政下の問題に憤っている人物は他にもいる。

「都は東京五輪のレガシー(遺産)を活用した『レガシースポーツイベント』を催しています。そのうちの一つ、『レインボーライド』という自転車のイベントが昨年6月に住民監査請求の対象になっています」

 こう明かすのは「日本サイクリング協会」(JCA)の幹部である。住民監査自体は最終的に要件を欠いていると判断されたが、

「警視庁捜査2課が五輪レガシー利権の解明に乗り出しています。レインボーブリッジを封鎖して自転車イベントを行うという企画は小池知事のアイデアだったといわれていますが、その予算規模は破格の約10億円。自転車のイベントにしては多額すぎる」(同)

 続けて言うには、

「『レインボーライド』を企画・運営する『実行委員会』と委託先事業者を選定する『選定委員会』は別の組織なのですが、両方ともトップに、元F1レーサーでジャパンサイクルリーグ(JCL)・チェアマンの片山右京氏(60)が就任していました。しかも、そのJCLの運営会社が事業の一部を請け負っていたのです」

 要は、お手盛りだったというわけである。

「自分も昨年、警視庁の捜査員から、片山氏と当時の都議会文教委員会の委員長で元トライアスロン選手でもある、都民ファの白戸太朗都議との関係について話を聞かれました」(同)

「(乙武君は)とてもじゃないけど応援できない」

 自身の学歴詐称疑惑に加えて、足下からも火の手が上がる小池氏だが、都知事選で3選を確実なものにするためには、是が非でも前哨戦である補選で乙武氏を勝利に導かなくてはならない。そのために頼ったのが、長らく後ろ盾の一人としてきた元衆議院議員・笹川堯氏だった。

 しかし、その笹川氏に聞くと、

「(小池氏から)“都民ファーストで乙武さんをやることになりました、だから助けてください”と頼まれた。でも、(対立候補に)須藤元気がいるでしょう。自分は空手(連盟会長)だから格闘技でしょ。そちら(須藤)を応援しているからね。(それに)乙武君は女性問題があった。とてもじゃないけど応援できない。乙武君がみっともないことになると、小池さん自体の人気にも関わるのでは」

 彼女は小泉純一郎元首相をはじめ、数々の権力者を籠絡して、権力の階段を駆け上がってきたといわれる。その“緑のたぬき”の化けの皮も、いよいよ剥がれつつあるということか。

 前編では、学歴詐称疑惑について実名告発を行った、元都民ファーストの会事務総長で弁護士の小島敏郎氏(75)本人の証言を紹介している。

「週刊新潮」2024年4月25日号 掲載