5年ぶりに筒香嘉智(32)が日本球界に帰ってくる。アメリカでは結果を残せなかったが、横浜DeNAベイスターズ時代に205本塁打を記録した栄光はいまださび付いていない。古巣への復帰について、生粋の横浜ファンとして鳴らす漫画家のやくみつる氏(65)が総括した。

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 筒香が、マイナー契約を結んでいた米ジャイアンツを退団したのは、先月21日のことだった。その後、今月8日にスポーツニッポンが1面で巨人への入団が決定的だと報じた。14日になると、今度は日刊スポーツが同じく1面で古巣横浜への復帰が決定的だと報じ、報道合戦を展開した。

「その後、15日から各メディアが雪崩を打ったように、筒香が自らの意志で横浜復帰を決めたと報じ出し、翌16日に正式決定しました。結果としてスポニチの記事は勇み足の“飛ばし”でしたが、根拠がなかったわけではありません。たしかに当初は、資金力に富み、筒香と同タイプの左の強打者がいない巨人が有利だと目されていたのです。しかし、10日に横浜が誇る主砲のタイラー・オースティン(32)が負傷し、長期離脱となる可能性が高くなったことで、風向きが変わっていったとみられています」(プロ野球担当記者)

復帰を待ちわびてきた横浜ファン

 元々、横浜は現有戦力が充実しており、筒香が戻ってきたところで、すぐに出場できる機会は少ないといわれていたが、

「今ならオースティンの穴を埋めるべく、筒香は多くの試合に出場できるはず。彼は巨人と横浜のいずれでも同じように試合に出られるのであれば、愛されている古巣のほうに復帰したいと、最終的な判断を下したのだと思います」(同)

 現在、横浜ファンは胸をなで下ろしているという。

「筒香は2009年にドラフト1位で横浜に入団した後、16年に本塁打王、15〜17年には3度のベストナインに輝くなど球団の顔として一時代を築きました。19年オフにメジャーへの挑戦で渡米して以降も、横浜ファンはそんな筒香の復帰を待ちわびてきたのです。彼らには1998年から一度も味わっていない日本一を“いつか筒香が戻ってきて達成してくれる”という期待があるからです」(同)

“人の心があった”

 大洋ホエールズ時代から熱狂的な横浜ファンのやくみつる氏は、

「もし、筒香が憎き宿敵の巨人への入団を決めていたら、私は心の底から彼をやじり、罵倒し尽くしていたでしょう。アメリカでうまくいかなかった選手でも、再び日本でプレーが見られるのはうれしいもので、復帰は大歓迎。ただし、その場合は前にいたチームで、というのが人の道です。今回、横浜に戻ってくる彼にはやはり人の心があったのでしょう。必ずや私たちの期待に応えてくれるはず」

 メジャーリーグ評論家でスポーツライターの友成那智氏によれば、

「守備がさほど得意ではなく、155キロ以上の速球を苦手とする彼は、メジャーでは成功しませんでした。しかし、球速がメジャーほどではなく、変化球を多用する日本では、まだまだ活躍の余地が残されています」

 紆余曲折がありながらも、何とか“横浜愛”を貫くことができた筒香。あとはプレーでファンを裏切らないように、最高の結果を残すだけである。

「週刊新潮」2024年4月25日号 掲載