ゴールデンウイークに読みたい、2024年に刊行された投資・運用・マネー本の7冊目は『高配当10倍株投資 「高利回り×高成長」で資産を4倍速で増やす!』。2024年5月上旬現在、登録者数が21.2万人の人気チャンネルTrade Labo【高配当・増配株チャンネル】の児玉一希氏が高配当株への投資について解説した一冊だ。

新NISAで大きな利益を出したいと考えている初心者向けに書かれた本書は、「高配当×高成長でインカムゲイン&キャピタルゲインの一挙両得」「高配当×成長株のハイブリッド投資で資産を『4倍速』で増やす」などとうたっており、これだけ見ると、簡単に爆益が出せるように誤解させる無責任な本のように感じる人もいるかもしれない。

実際のところ、決してそんなのことはない。氏は本書でもYouTubeチャンネルでも、銘柄選びの方法と根拠、その方法で選ばれた具体的な銘柄をしっかりと提示し、投資経験があまりない人でも理解しやすいよう解説しており、分かりやすさと納得度などは語り口と共に広く支持されている(価格は紙版、税込み)。

■初心者なら『株式投資2年生の教科書』もあわせて読みたい

『高配当10倍株投資 「高利回り×高成長」で資産を4倍速で増やす!』(児玉一希、KADOKAWA、1650円)

筆者の児玉一希氏(株式会社RES代表取締役)は、東京都立大学(旧首都大学東京)卒業後、リクルートグループへ入社。2016年に転職をきっかけに金融教育業に携わり、自身も投資家になったという。仕事をしながら無理なくできる長期投資スタイルを確立し、経営者・上場企業役員・医師など指導した個人投資家は2万名に及び、YouTubeチャンネルは2021年9月の開設から2年半で登録者数19万人に到達している。

本書はまず「『高配当』こそ『高成長』が狙える! 爆速&着実に資産形成するロードマップ」を提示し、「9割の素人投資家がハマる高配当投資の甘い罠」で警鐘を鳴らした上で、「10倍×高配当を根こそぎ炙り出すスクリーニング!」の章でスクリーニング方法(銘柄の絞り込み)を教える。このほか、「爆益」「爆配」が期待できる”予備軍”の見つけ方や、暴落が起きたときにどうすればいいかといったテクニックについても解説。そして最後は、「迷ったらコレを見ればOK! 購入リスト即候補入りの厳選9銘柄」で締めくくられている。

新NISAが始まり、昨年までつみたてNISAをしていた個人投資家の中には、成長投資枠が使えるようになったことから個別銘柄への投資を考えている人も少なくないだろう。

ただ始めたばかりだと、短期での値上がりを狙っての売買は難しく、配当(もしくは優待)を得るために持ち続ける手法のほうが始めやすい。だから投資情報のメディアや記事などでも「増配」「●期連続」など高配当銘柄を紹介するものは少なくないのだろう。

そうした配当が期待できる銘柄の中でも、高成長が見込める銘柄があれば、(インカムゲインもキャピタルゲインも狙えるわけで)誰もが知りたくなるはずだ。そんな情報が知りたい投資家が、YouTubeチャンネル名にも「高配当・増配株チャンネル」を掲げている児玉氏を支持しているのもうなずける。

なお本書タイトルにも「10倍株」という言葉がとられているが、株式市場では、株価が10倍以上になった銘柄をテンバガーといい、最近特に注目されている。テンは「10」、バガーは「塁打」の意味で、野球用語になぞらえたものとされている。長い期間をかけて達成する銘柄もあれば、短期で一気に伸びて10倍以上に至る銘柄もあるが、多くの株式投資家が、そんな大化け銘柄を探している。

児玉氏は本書を上梓する1年ほど前に『株式投資2年生の教科書』(Gakken、1650円)を刊行している。この“2年生”とは、株式投資を少しはしたことがあるという完全初心者ではない人を想定したもので、具体的には、つみたてNISAや確定拠出年金(iDeCoや企業型DC)などをしている人。こちらのほうが、よりやさしい内容なので、個別株投資の経験があまりないという人は、まずは前著から学ぶとよいかもしれない。

文/編集・dメニューマネー編集部