エンゼルス入団以降は低迷が続いているアンソニー・レンドン(写真:APアフロ)

 米国でも二刀流としてセンセーションを巻き起こした大谷翔平と相まって注目度が高まっているメジャーリーグ。当然、日本に入ってくる情報は日本人プレイヤーの結果が中心となるが、所属しているチームの成績も気になるところ。

 特に昨年オフに大谷と山本由伸が加入したことでドジャースを応援する人は大幅に増えたはず。それに伴い、ムーキー・ベッツ遊撃手やフレディ・フリーマン一塁手の“元MVPコンビ”を中心にドジャースの勝利に貢献してくれる選手については、日本のファンも心強さを感じているはずだ。

 大谷が昨年まで在籍し、日本でも応援する人が増えたエンゼルスではマイク・トラウト外野手がそれに近い存在だったが、逆にチームの足を引っ張るような選手については“アンチ”が増えてしまうケースもある。

 過去にもイチローが加入したことで日本でマリナーズファンが増えたことがあったが、イチローがどんなに活躍をしても移籍1年目を除いてチームは低迷続き。どうにかして勝って欲しいという思いもあり、オフに大型契約で獲得した選手については大きな期待をした日本人ファンも多いはずだ。

 だが、マリナーズの“救世主”になるはずだった実績豊な選手が、入団後に低迷することが目立ったのを覚えている人も少なくないだろう。

 その中でも非常に悪いイメージを残したのがリッチー・セクソン一塁手だ。身長2メートルを超す大砲はブルワーズ時代に45本塁打を2度マークするなど活躍、2004年オフにダイヤモンドバックスからフリーエージェント(FA)となりマリナーズ入りした。当時としては球団史上最大の4年5000万ドル(約75億8000万円)という契約を結んだことからも期待値の高さがうかがえるだろう。

 入団後は1年目に39本塁打、121打点をマークし、翌年も34本塁打、107打点と自慢の長打力は披露した。だが、初年度はア・リーグワーストの167三振、2年目も同2位の154三振を記録するなど不確実性も目立ち、チームも2年連続でア・リーグ西地区最下位に沈んだことで評価はされなかった。

 そして、3年目は成績が急降下。リードオフマンのイチローが作ったチャンスをことごとくつぶし、本塁打は21本に減少し打率は.205に下がった。一方でチームは88勝74敗と地区2位に躍進しており、「セクソンさえ活躍していれば…」と思ったのか温厚として知られるマリナーズファンからブーイングを浴びることもしばしば。4年目はさらに成績を落とし、現在でも「失敗したFA選手ランキング」では常連となってしまっている。

 マリナーズは他にも、投手ではカルロス・シルバ、ミゲル・バティスタ、野手ではチョーン・フィギンズ内野手などチーム加入後に成績が下降した選手は多い。イチローが全盛期だった時代はメジャー屈指のフェリックス・フェルナンデスという右腕がおり、その2人を擁しながら勝てないチームの中で彼らは“憎しみ”の対象ともなった。

 そして近年、彼らのように日本人にネガティブな意味で有名となったのは、“大谷の元同僚”であるアンソニー・レンドン三塁手だろう。

 レンドンが2019年オフに7年総額2億4500万ドル(371億9000万円)という大型契約でエンゼルス入りして以降、期待を裏切り続けているのはご存知の通り。入団したシーズンを考えても、エンゼルスは大黒柱のトラウトに加え、大谷が二刀流として計算できるようになったことで、さらなる軸としてレンドンを迎え入れ“コンテンダー”として世界一を目指そうとしていたはずだ。

 だが、移籍後は2021年に58試合に出場したのが最多で、今季が5シーズン目となるが通算でも185安打しか放っていない。

 そして、なんと言ってもレンドンが怒りを買う理由は“気持ちが切れてしまった”感があるからだ。昨オフにも「家族や信仰が優先で野球はあくまで仕事」といった旨の発言をしている。確かに野球は仕事であるのは間違いないだろうが、怪我も多く、お金に見合ったパフォーマンスができていない選手からのこの発言はファンから怒りを買うのは仕方がないだろう。特に「職場での責任感」を大事にする日本人からすると、許しがたい部分があるはずだ。

 今年もシーズンインから低調が続き、開幕から20打席連続無安打のニュースが伝えられるとSNSを中心に辛辣なコメントが目立った。5日のレッドソックス戦でようやく初安打を放ったが、ここまで打率.162(37打数6安打)と全くお金に見合っていない数字。開幕したばかりとはいえ、期待感がわいてこないのが実情。今季も含め26年まで約1億1500万ドル(約175億6000万円)の契約が残っているが、現地では戦力外にすべきといった記事も出ているほどだ。

 大谷が在籍した余韻があり、盟友でもあるトラウトが在籍していることから、いまだにエンゼルスの成績を気にしているファンもいる。だが、それは同時にレンドンの“情けなさ”を改めて再認識することなのかもしれない。(文中の成績は現地4月8日終了時点)