巨人・大城卓三

 巨人の“正捕手問題”は今後どのような展開をみせるのだろうか。「打てる捕手」の大城卓三のスタメン出場が減り、小林誠司、岸田行倫らとの捕手複数人制で戦っていく気配がある。

 ここ数シーズンは打力の大城が正捕手争いで一歩リードしていたが、捕手出身の阿部慎之助新監督が今シーズン就任したことで早くも序列に変化が現れている。

 今季は大城が開幕戦からスタメンとなっていたが、武器である打撃の調子が上がらず。ここまで23試合の出場で打率.188(64打数12安打)、0本塁打、3打点の成績で5月8日には2022年6月以来となる二軍降格となった。

 阿部監督は「成績もそうだし、1番のメインは気分転換ということで」と語るなど、一時的な登録抹消であるのは間違いないだろう。だが、大城の代わりに昇格した若手の山瀬慎之助、強肩を含めた守りの小林、総合力の岸田らがシーズンを通して併用されそうな予感が漂っている。

「一塁手としての起用経験もある大城の打力はクリーンアップを任せられるレベル。本来なら正捕手にしたいが巨人は2年連続Bクラスと勝てていない。捕手を柱に守備を固めたいという考えは理解できる」(在京球団編成担当)

 巨人は原辰徳前監督時代の2019、2020年のリーグ連覇以来、優勝から遠ざかり、2022年からは2年連続のBクラス4位と名門らしからぬ戦いが続いている。そんな中、正捕手として出場試合数を増やしてきた大城だったが、今季は打撃不振などもあり、出場機会を減らしている。

 開幕からチーム自体は若手を中心に粘り強い戦いを続け、5月8日終了時点で首位阪神から0.5ゲーム差の2位。戦いの内容としては投手陣の頑張りは目立つが、貧打ぶりが気になるところ。チーム打率.228(リーグ5位)、本塁打12本(同ワースト※3チームが同数)、得点88(同5位)と打線の奮起が待たれる。

 こういった状況で阿部監督は「守り勝つ野球」に切り替えたのか、小林、岸田などを起用する試合が増えて行った。

「今季は『飛ばないボールではないか?』と言われるほど各球団の得点が取れていない。ロースコアで試合が進むケースが多く、守備を優先した捕手起用をせざるを得ない。打ち勝つ野球ができるのなら大城がスタメンで良いと思うのですが……」(巨人OB)

 とはいえ、大城は昨シーズン自己最多の134試合に出場して打率.281(424打数119安打)、16本塁打、55打点とキャリアハイの成績をマークした主力。今季も開幕からそこまで調子は悪くなかったが、4月の中旬ごろから早々とスタメン落ちが増えたことに異論もある。大城と同じく現役時代に強打の捕手として活躍した元ロッテの里崎智也氏が「大城使わないのはプロ野球7不思議だわ」と発言するなど、巨人の捕手起用については様々な議論がなされている。

 大城が二軍に落ちたことで、今後は守備重視で小林のスタメン出場も増えると見られているが……。

「守備だけなら小林は安心して見られる。鬼肩と言われる強肩は健在、インサイドワークやフレーミングも良い。しかし打力が弱過ぎる。2割前半打ってくれれば文句はないが」(巨人OB)

 今季の小林はここまで打率.143(35打数5安打)。岸田は打率.276(29打数8安打)だが守備力については小林の方が上。ここ数年は苦しんでいた小林だが、今季は復活を果たしたエース・菅野智之との“スガコバ”バッテリーが話題となるなど、再び評価を上げている印象を受ける。

 今後の捕手の起用法は様子を見てということになるだろうが、巨人には大城を“蔑ろ”にできない事情もある。なぜならば、大城は今季中に国内FA権を取得する見込みだからだ。このまま不遇が続けばオフに出場機会を求めて退団という可能性もなくはない。ここ数シーズンにわたってチームの欠かせない戦力となり、捕手という要のポジションなだけに流出は避けたいところだろう。

「試合出場時間は間違いなく減っているので、攻守に感覚が狂う可能性もある。何より現状の起用法だと気持ちが切れてしまわないかも心配」(巨人関係者)

「大城にとっては自らを売り込むチャンスの年。アピールできれば他球団からの評価も高まるのでモチベーションは高いはず。試合に出せば、これから結果を出していくのではないか」(巨人担当記者)

「打てる捕手」は過去に野村克也氏(元南海ほか)、古田敦也氏(元ヤクルト)、城島健司氏(元ソフトバンクほか)などがいたが、彼らは同時に捕手としての守備力も高評価されていた。

 大城の守備力に関しては決して評価は高くないが、逆にそこまで悪くないという位置づけ。昨シーズン盗塁阻止率は侍ジャパンでも活躍した中村悠平(ヤクルト)に続くリーグ2位、捕手防御率も多く試合に出場した中で3.15という数字だった。

「大城の守備力は極端に低いわけではなく他球団ならレギュラーになれるレベルにある。しかしそれ以上の守備力を誇る小林がいるのは巨人の戦力が揃っている証拠。捕手併用制がハマればチームはかなり強くなる予感もする」(在京球団編成担当)

 阿部監督自身が現役時代は「打てる捕手」であり、メリットとデメリットを知り尽くしているだけに現在の状況には相当頭を悩ませているはず。シーズンが進むにつれ捕手併用制がどんな形に進化していくのか注目される。