押切もえさん

 モデルとしてはもちろん、タレントとしても作家としても活躍する押切もえさん。無類の読書好きとしても知られ、2020年から2年間、朝日新聞の読書面で書評委員を務めた経験もあります。そんなもえさんから、子どもたちといっしょに読んでいるお気に入りの絵本を紹介していただきました。

■シンプルなはり絵と独特のストーリー 

『ねないこだれだ』(せなけいこ作・絵/福音館書店)

 『ねないこだれだ』(せなけいこ作・絵/福音館書店)

 上の息子も下の娘も大好きで、思い出いっぱいの赤ちゃん絵本です。読み終わると「もう一回! もう一回!」とリクエストされるので、何度も繰り返して読みました。せなけいこさんの絵本はどれも言葉づかいがかわいくて、読んでいても楽しいんです。最近になって息子が「この絵本の絵って切り絵だったんだね。すごいね、小さいときには気づかなかったよ」なんて言ってくれて、成長したんだな、と感じます。

■子どもも大人も泣ける絵本 

『ないたあかおに』(はまだひろすけ文 いけだたつお絵/偕成社)

 『ないたあかおに』(はまだひろすけ文 いけだたつお絵/偕成社)

 私が子どもの頃から大好きな絵本。大人になった今でも読むと泣いてしまうんです。青鬼くんの優しさ、思いやりが胸にしみます。その一方で、見た目が怖いというだけで仲間に入れてもらえない人間たちに、不条理を感じるのです。息子に最初に読んだときには、少し難しかったみたいでポカンとしていました。だから「たとえばお友だちの〇〇くんがね」というように、実例を入れて話したら「それは悲しいね」と共感してくれました。絵本をきっかけに、話題を広げていくのも楽しいですね。

■幼児の心の成長を描いた名作

『ピーターのいす』(E・ジャック・キーツ作 きじまはじめ訳/偕成社)

『ピーターのいす』(E・ジャック・キーツ作 きじまはじめ訳/偕成社)

 下の子が生まれるときに、義理のお姉さんからいただいた本です。

 妹が生まれたピーターは、自分が使っていたベビーベッドや食事用のいすがピンク色に塗られてしまい、ショックを受けるんです。1つだけ残った青い子ども用のいすをもってピーターは家出しようとする。切なくなるお話です。兄夫婦も上が男の子で下が女の子、私もそうだったので、この絵本は本当にぴったりでした。義姉の思いやりが伝わってくる思い出深い一冊です。

■小さなかしこい魚のおはなし

『スイミー』(レオ・レオニ作 谷川俊太郎訳/好学社)

 

 『スイミー』(レオ・レオニ作 谷川俊太郎訳/好学社)

 レオ・レオニさんの絵本はほとんど持っています。絵が芸術作品のように美しく、物語にも説得力があるのです。『スイミー』は、その中でも大好きな絵本。「どんなに小さくても、力を合わせれば大丈夫なんだね」って子どもたちと話しています。先日水族館に行ったときにも、群れで泳いでいる魚を見て「スイミー作戦だ!」なんて話していました。

■四季の食べ物や行事を図鑑風に紹介

『かばくんのはるなつあきふゆ』(ひろかわさえこ 作・絵/あかね書房

 『かばくんのはるなつあきふゆ』(ひろかわさえこ 作・絵/あかね書房

 最近では野菜も果物も一年中出回っていますよね。季節ごとに咲く花も昆虫の姿も、植物園や動物園でなければ見られない場合もあります。この絵本には、四季の花や虫や食べ物や行事が描かれていて、小さな図鑑のよう。子どもたちに読み聞かせながら、「あ、これって春の野菜なんだ!」とか、「日本はこんなふうに四季を大切にしてきたんだ」と、大人も気づかされる絵本です。

■探して楽しむ”定点観測”えほん

『ゴチソウドロ どこにいる?』(すとうあさえ作 さとうめぐみ絵/くもん出版)

 『ゴチソウドロ どこにいる?』(すとうあさえ作 さとうめぐみ絵/くもん出版)

 ゴチソウドロというサルを見つける「さがし絵本」です。子どもはさがし絵本が大好きですが、他の絵本と違うのは、1つの村の12カ月が定点で描かれていることです。同じ風景なのに4月と12月では木々の葉の色も、描かれる行事も全然違います。6月は雨が降っていたり、9月はお月見だったり。ゴチソウドロを探しながら、日本の風景や行事について会話が広がる素敵な絵本です。

(構成・神素子)