ゴルフ場の中には、コース内などに神社や祠(ほこら)が建てられていることがありますが、なぜなのでしょうか。

地域住民への配慮により移設されずに残っているケース

 ラウンド中、コース内などに小さな神社や祠(ほこら)が設置されている風景を見たことがあるでしょうか。

ゴルフ場内に建立されている祠(ほこら)
ゴルフ場内に建立されている祠(ほこら)

 ゴルフ場内で何かを祀っている風景は珍しいのか、写真を撮影してSNSなどにアップしている人もいます。

 ゴルフ場の敷地内に神社や祠があるのはどうしてなのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

「日本では、昔からこの世に存在するありとあらゆるものに神が宿っているという『八百万(やおよろず)』の考え方が定着しています。木々や大地も同じで、地域の神様を祀る神社や祠は、小さいものを含めると数えきれないほど建てられてきました。ゴルフ場の建設が決まった土地に神社や祠があった場合にはどのような措置を取るべきか、必ずゴルフ場側と地域住民との間で協議が行われます」

「一部では、公民館のような地元の人たちが集まりやすい場所に移設するという手段が取られることもあります。なかには位置を変えずに、地域住民がいつでも気軽にお参りに来られるよう、神社や祠に向かうために使われていた道を残すといった対応がなされるケースもあります」

「田畑のあぜ道のような、公道としては認められていないものの日常生活に欠かせない私道に近い土地は、かつて地図上で赤く示されていた経緯から『赤道(あかみち)』と呼ばれています。特に神社や祠を行き来するのに使うものは廃道にすることが非常に困難で、そのままにするか開発しにくい形状の際は新しい道をつくるかのどちらかです。ゴルフ場建設においても同じで、地元の人が参詣するための道は確保しながら、ゴルフコースにも干渉しないようなデザインにするなどの配慮がなされます」

ゴルフ場造成に際して新たに神社や祠を建てるケースも

 また、飯島氏は「元々その土地に神社や祠がなかった場合でも『ゴルフ場をつくる』という行為のために新たに建立される場合もある」と話します。

「ゴルフ場は山地や丘陵といった広大な土地を切り開いて人工的に造成されるので、その場所に茂っていた木々や生息していた動物の住処を奪う、一種の『殺生』をしてしまっていると考えることもできます」

「ゴルフ場をつくったことによって、訪れるゴルファーはもちろん、地域の人々にも災いが起こらないよう祈念するという意味を込めて、神社のほかに観音様の像が建てられることもよくあります。茂みに隠れていて見つけにくい場合もありますが、プレー中に立ち寄る機会があったら軽く手を合わせるだけでも何かいいことがあるかもしれません」

「コース内に神社や祠があることをアピールし、観光スポットにしているゴルフ場もあります。新潟県新発田市の『紫雲ゴルフ倶楽部』では、建設前の地形調査の際に発見され地元からも忘れ去られていた祠を再建立するとともに、ゴルフ場開設への感謝の気持ちを込めて、京都の伏見稲荷大社の分神を『紫雲稲荷』として祀っています」

「静岡県伊東市の『川奈ホテルゴルフコース大島コース』には、昭和3年のオープン時に天照皇大神(アマテラスオオミカミ)を土地の守護神とした神社を建て、その土地に『あらかし』の木が自生していたことから『あらかし神社』と名付けられました」

「滋賀県甲賀市の『滋賀カントリー倶楽部』の12番ホールには、造成時に伐採した木や動物たちへの供養を目的に観音像が建っています」

 ゴルフ場の建設にあたり、環境破壊を懸念する声もあります。しかしゴルフ場側は、土地を使わせてもらっていることへの感謝、そこで暮らしていた生き物への鎮魂の意を込めて神社や祠を建立してきました。私たちゴルファーも、安全にプレーができることに感謝しましょう。

e!Golf編集部