子どもの入学や入園などに伴い、4月から働く時間を増やす人は多いのではないでしょうか。そして同時に「扶養」の問題が気になっているかもしれません。特に2024年は社会保険制度の改正もあることから、なおさら心配ではないでしょうか。   本記事では、年収130万円の壁を超える人が勤務時間を増やすうえで注意しなければならないことを解説します。

6つの年収の壁

まずは年収の壁について整理しておきましょう。扶養内で働く人が気にしなければならない年収の壁は以下の6つです。

●年収100万円 超えると住民税がかかる
●年収103万円 超えると所得税がかかる
●年収106万円 超えると社会保険料がかかる(従業員数101人以上の会社で働いている場合。2024年10月からは51人以上の会社、後記)
●年収130万円 超えると社会保険料がかかる
●年収150万円 超えると配偶者特別控除が減額され、配偶者の税金が増える
●年収201万円 超えると配偶者特別控除がなくなり、配偶者の税金が増える

 

年収130万円以上になるなら社会保険加入になる

年収130万円の壁を超えないように129万円などギリギリで、扶養内で働いている人は、住民税と所得税は少し発生するものの、従業員数100人以下の会社で働いている人であれば社会保険料はかかっていないでしょう。
 
ただ、これから勤務時間を増やして年収130万円を超えるのであれば、社会保険料が発生します。住民税や所得税よりも大きな額が給与から天引きされるので、最も注意したい点です。
 

勤務時間を2時間増やしてかかる社会保険料は約2万4000円

年収130万円、月の勤務日数20日、時給1200円で働いている人が、勤務時間を2時間増やした場合にかかる社会保険料を計算してみましょう。

【月収】
(130万円÷12ヶ月)+(1200円×2時間×20日)=約15万6000円
 
【社会保険料】
健康保険料9264円(東京都、介護保険第2号被保険者に該当する場合)+1万4640円=2万3904円

勤務時間を2時間増やすことで月収は4万8000円増えますが、新たに社会保険料が約2万4000円発生することによって、手取りとして増えるのは半額になってしまいます。
 

2024年の社会保険改正は気にしなくて大丈夫

2024年に行われる社会保険の改正は、年収106万円の壁に関するものです。2024年9月までは「従業員数101人以上」の会社に関係する年収の壁となっていますが、2024年10月以降は「従業員数51人以上」に改正されます。
 
つまり、年収130万円を超えて社会保険に加入することを前提にしている人にとっては、関係のない改正ということですね。年収130万円未満で社会保険の扶養でい続けたい人で、従業員数51人以上の会社で働いている人であれば、年収を下げなければ社会保険加入となるので注意が必要です。
 
また、2025年には社会保険の大きな改正が見込まれます。しかし、これも適用範囲を拡大する形の改正であると予想されることから、2024年のうちに社会保険に加入する人には関係しない可能性が高いでしょう。
 

まとめ

年収130万円未満ギリギリで働いている人が勤務時間を増やす場合、社会保険に加入しなければならなくなります。本記事の計算では、増えた給与の半分は社会保険料になってしまうので、しっかり理解したうえで勤務時間を増やしましょう。
2024年に行われる社会保険の改正については、社会保険の適用範囲が拡大されるものであり、既に社会保険に加入している人には関係ないので安心してください。
 

出典

厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト 従業員数100人以下の事業主のみなさま
全国健康保険協会 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
国税庁 家族と税
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士