大学などに進学する際、奨学金を借りている人も多いでしょう。奨学金は社会人になったら、返還する必要があります。しかし、やむを得ない事情によって、返還が難しくなる場合もあるのではないでしょうか。   そこで、本記事では交通事故で両親が亡くなった人を例に挙げて、自分ひとりで奨学金を払いきれるか不安を感じた場合、どうすればよいかを解説していきます。

奨学金の返還が難しい場合は?

奨学金の返還が難しくなった場合、独立行政法人日本学生支援機構にその旨を願い出ることで、奨学金の「減額」「返還期限猶予」「返還免除」を受けられる可能性があります。
 

・減額返還制度

減額返還制度とは、月々の返還額を少なくしてくれる制度のことです。ただし、返還困難な理由が災害、傷病、経済的事情によるものでなければなりません。なおかつ、減額すれば返済できることも条件になります。
 
減額した分だけ返還期間は延長されます。毎月の返還額が減額されるため、無理なく返還を続けることが可能です。1ヶ月あたり減額される返還額は2分の1または3分の1です。
 
ただし、日本学生支援機構による審査があります。審査で承認されれば、1回の願い出につき減額期間を12ヶ月延長することができ、最長で15年(180ヶ月)まで延長することができます。延長するたびに日本学生支援機構に対して願い出を行なわなくてはなりません。
 

・返還期限猶予制度

日本学生支援機構に対して、返還期限猶予を願い出れば、一定期間返還を先送りにすることが可能です。ただし、災害、傷病、経済困難、失業などの理由がなければなりません。また、無条件に認められるわけではなく、審査が行われます。審査に通り、猶予が承認された期間中は奨学金を返還する必要はありません。
 
ただし、返還義務がなくなったわけではないため、適用期間が終われば、再び返還を開始しなくてはなりません。適用期間は通算で10年間です。
 

・死亡、または精神・身体の障害による返還免除

奨学金を借りた本人が死亡して返還不可能になったときは返還が免除されます。また、精神・身体の障害によって返還が困難になった場合も返還免除の対象です。
 

・令和6年能登半島地震の返還免除制度

令和6年の能登半島地震の災害に遭い、奨学金の返還が困難になった場合、返還期限猶予の対象になります。その際、罹災証明書等が必要になりますが、すぐに提出できない場合は事後の提出でも問題ありません。
 
以上の願い出に際して、日本学生支援機構に対してマイナンバーと所定の書類を提出しなくてはなりません。ただし、審査によって承認されない場合はこれまで通り、返還し続ける必要があります。
 

減額返還・返還期限猶予制度の利用を検討しよう!

例に挙げたような社会人になってから日が浅い新卒の場合、まだ給料も低く十分な貯金がない可能性があるでしょう。そのうえ、頼りになる親がいない場合、奨学金の返還が難しくなることがあるかもしれません。このような場合、日本学生支援機構にその旨を願い出ましょう。承認されれば、奨学金の「減額」「返還期限猶予」を受けられる可能性があります。
 

出典

独立行政法人日本学生支援機構 月々の返還額を少なくする(減額返還制度)
独立行政法人日本学生支援機構 返還を待ってもらう(返還期限猶予)
独立行政法人日本学生支援機構 死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除
独立行政法人日本学生支援機構 令和6年能登半島地震に遭われた返還者の方へ(返還期限猶予について)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー