春闘や賃上げがニュースで取り上げられていますが、中小企業に勤めている人の中には「賃上げの恩恵を受けられていない」という人もいるのではないでしょうか。   賃上げを行えるかどうかは企業の収益力や財務状況次第なので、すべての企業で数万円の賃上げが行われるとは限りません。   本記事では、50歳で年収300万円、賃上げ額は2000円であることにショックを受けたという人のケースを解説します。

老後破産の実情と「不安に感じている人」の割合は高い

50歳会社員のAさんは、年収300万円の正規雇用者です。2024年4月より昇給が行われましたが、昇給額は月額2000円でした。また、Aさんの勤務先には退職金制度がありません。
 
独身で住宅を購入する予定もないため、教育資金やまとまった住宅資金を用意する必要はありません。しかし、勤務先の収入水準が低いため、貯蓄は300万円程度だそうです。
 
厚生労働省の「公的年金シミュレーター」でAさんが65歳以降に受け取れる年金額を試算したところ、年額約141万円でした(平均年収は300万円・60歳で退職という条件)。
 
Aさんは「最近は老後破産など恐ろしい言葉を聞く機会も増えて、かなり焦っている。自分は老後破産せずに済むだろうか……」と不安を感じているとのこと。
 
SBIエステートファイナンス株式会社が行ったアンケート調査によると、「老後破産への不安はありますか?」という問いに対して、「不安がある」と回答した人が36.7%、「どちらともいえない」と回答した人が34.2%でした。
 
約7割の人は、自信をもって「自分は大丈夫だろう」と考えられない状況が見て取れます。老後不安を感じている主な理由として、以下が考えられるでしょう。
 

・長寿化
・公的年金支給額の先細り懸念
・医療・介護費用の増加

 
定年まで10年あるAさんが、今から行える対策として何が考えられるでしょうか?
 

貯金・年収が不安な人がやるべきこととは

老後不安を感じているAさんですが、今から行える対策は「支出を削る」「収入を増やす」ことです。
 
SBIエステートファイナンス株式会社が行ったアンケート調査によると「将来、年金(厚生年金と国民年金)のみで家計収支はプラスになる予定ですか?」という質問に対して、「いいえ」と回答した人が80%を超えていました。
 
Aさんが現に老後に不安を感じているのであれば、できるだけ早く対策を進めるべきでしょう。
 
家計収支をプラスにするために、まず行うべきは収支の見直しです。例えば、固定費を削減すれば節約効果が持続します。通信費や保険料などの固定費で無駄な出費があれば、速やかに削減すべきです。
 
ほかにも、健康管理を行い健康体を維持することで、医療費を抑えられます。50代以上になると疾病にかかるリスクが高くなることから、病気予防に努めることも有意義です。
 
「収入を増やす」というアプローチで見ると、新NISAやiDeCoを活用して投資を行う方法があります。ただし、Aさんの年齢では長期的な運用が現実的ではないため、ある程度リスクを抑えた運用が求められるでしょう。
 
転職も1つの選択肢ではありますが、Aさんの年齢を考えると希望通りの転職をかなえられるとは限りません。スキルや経験次第ですが、「今よりも年収が上がればラッキー」くらいの温度感で求人情報を確認すると良いでしょう。
 
また、できるだけ長く働いて公的年金の受給額を増やすことも有力な選択肢となります。厚生年金保険は最長で70歳まで加入でき、保険料を納めた分だけ受給額も増えます。
 
さらに、年金を繰下げ受給すれば1ヶ月あたり0.7%増額された年金を一生涯受け取ることが可能です。可能な限り「年金を受給しなくても問題なく生活できる期間」を作ると良いでしょう。
 
「健康を維持してできるだけ長く働くこと」「公的年金の繰下げ受給を行うこと」というシミュレーションを立てて準備を進めれば、老後不安をある程度は軽減できるでしょう。
 

まとめ

将来の老後不安を感じている人は、「今自分ができること」を探し、実践することが大切です。少子高齢化が進んでいる日本では、公的年金支給額の先細りを織り込む必要があります。「年金をいくらもらえるのか」「老後の生活費はいくらくらいか」をシミュレーションしましょう。
 
「老後破産」と聞くと恐ろしい印象を持ちますが、支出を抑えて収入の範囲内で生活できれば、破産することはありません。
 

出典

SBIエステートファイナンス株式会社 老後破産に関するアンケート
内閣府 令和5年版高齢社会白書 第2節 高齢期の暮らしの動向
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー