特別養護老人ホームとは、公的に運営されている介護保険施設です。 入居には条件があるものの、一般的な施設よりも安い費用で利用できるのがメリットです。 ただ、利用経験のない方にとっては「実際にどれくらいの費用がかかるの?」「申し込めばすぐに入所できるものなの?」など、気になることも多いでしょう。 そこでこの記事では、要介護3の方の場合、特別養護老人ホームにはすぐ入所できるのか、月12万円の年金で入所できるのかについて解説します。
特別養護老人ホームは現在空き待ちの状態
特別養護老人ホームは人気が高く、今申し込んだ場合でもすぐに入所できる状態ではないようです。
厚生労働省 老健局高齢者支援課「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」によると、2022年4月1日時点で特別養護老人ホームに入所申込をしているものの入所できていない人の数は、要介護3以上の方で25万3000人いるようです。
これは、前回の2019年の調査時よりも3万9000人減っているため、以前よりも空き待ちは若干緩和されているといえるでしょう。
しかし、それでもまだ全国で25万3000人いるため、申し込んだからといって確実に入所できるものではないというのが現状と考えられます。
入所は必要性の高い方から優先される
特別養護老人ホームへの入所は申込順ではなく、必要性の高い方から優先される仕組みとなっています。
入所の必要性の高さは、入居者の要介護度や年齢、介護者の在宅介護期間や住宅環境などに基づいて点数化されて評価されます。
申込者の状況をすべて点数化し、点数の高い方を優先するため「申し込んでおけばそのうち必ず入所できるものではない」ということは頭に入れておきましょう。
ちなみに、公益財団法人 生命保険文化センターの「介護を受けている人はどれくらい?」によると、特別養護老人ホームの利用者のうち約7割が要介護4または5の方であることが分かりました。
これより、要介護3の方の入所はなかなか難しい可能性が高いと推測されます。
特別養護老人ホームにかかる費用は?
特別養護老人ホームにかかる費用は、個室や多床室などの住環境によって異なります。
特別養護老人ホームの、1ヶ月にかかる費用の例は表1の通りです。
※1ヶ月=30日と仮定して計算
表1
多床室を利用した場合 | ユニット型個室を利用した場合 | |
---|---|---|
施設サービス費の1割 ※要介護3の方の場合 |
2万1960円 (732単位×30日×10円×1割) |
2万4450円 (815単位×30日×10円×1割) |
居住費 | 2万5650円(855円/日) | 6万180円(2006円/日) |
食費 | 4万1760円 (1392円/日) |
4万1760円 (1392円/日) |
日常生活費 | 1万円 (施設により異なる) |
1万円 (施設により異なる) |
合計 | 9万9370円 | 13万6390円 |
※厚生労働省「令和6年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案」「第194回社会保障審議会介護給付費分科会 資料10 その他の事項」「介護事業所・生活関連情報検索 サービスに係る利用料」を基に筆者作成
表1より、年金月額12万円であれば、多床室であれば入所できますが、ユニット型個室での入所は年金だけでは難しいと考えられます。
施設の費用などを確認した上で入所を検討しましょう
年金月額が12万円でも、特別養護老人ホームへの入所は可能です。
ただし、要介護3の場合は多床室であれば足りますが、ユニット型個室の場合は年金だけでは難しいと考えられます。
もし所得や資産が一定以下の場合は、利用者負担が軽減される措置も講じられているため、必要に応じて市区町村に確認し、支給対象になるかを確認することをおすすめします。
ただ、申し込んだからといって必ず入所できるものではないということは頭に入れておきましょう。
出典
厚生労働省
老健局高齢者支援課 特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)
令和6年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案(151.152ページ)
第194回社会保障審議会介護給付費分科会 資料10 その他の事項(4ページ)
介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
公益財団法人 生命保険文化センター リスクに備えるための生活設計 介護を受けている人はどれくらい?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー