新入社員から「飲み会も勤務時間だから残業代が出るはずだ」と言われたらどう思いますか?「飲み会が労働時間に含まれるはずがない」という自分の中にある「常識」を伝えたいところですが、その常識が必ずしも正しいとは限りません。   本記事では飲み会が労働時間となる場合の事例を交えながら、飲み会を強制する問題点や新入社員との接し方について考えていきます。

飲み会は労働時間?

厚生労働省は「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」としています。
 
労働時間に当たるかどうかは、就業規則や従事している仕事の内容に左右されず、会社や上司による指揮命令下にあるかどうかで判断されるというのがポイントです。
 
では実際に、今回のケースが労働時間とみなされるのかどうか、考えてみましょう。
 

強制参加の飲み会は労働時間になり得る

飲み会参加の強制は会社からの指示と考えることができます。つまり飲み会の時間は指揮命令下に置かれていることとなり、労働時間とみなされる可能性があるのです。
 
当然労働時間に対しては賃金の支払い義務が発生します。飲み会が就業時間外に行われている場合は残業代の支払いが必要です。
 

飲み会に出ないことで不利益をもたらすのもNG

飲み会の参加を任意とした場合でも労働時間とみなされることがあります。労働時間となる可能性があるのは、参加しないことで不利益を被る可能性があるため、実質的に参加しなければならない飲み会です。
 
例えば、飲み会の参加率が昇進やボーナスといった評価に影響する、飲み会に参加しない社員を仲間外れにする、飲み会に参加しない社員を叱責する上司がいるというケースが該当します。
 
こういった行為は黙示の指示があったと認められ、飲み会が労働時間とみなされる可能性があるのです。就業時間外に実施する場合は、もちろん残業代を支払わなければなりません。
 
飲み会を業務としないためには、飲み会の参加を任意とすることはもちろん、飲み会に参加しなくても問題ない環境を作ることが大切です。
 

飲み会に頼らないコミュニケーションが大切

強制参加または参加しないことが不利益につながる飲み会は、労働時間とみなされます。新入社員が言う「残業代が出る」は正しく、「飲み会は出て当たり前」「飲み会で親睦を深めることで仕事がうまくいく」という従来の考え方からは脱却する必要があるでしょう。
 
上司や先輩が新入社員に対してすべきなのは、「上司や先輩に気を遣って飲み会に参加するのが常識」と教えることではないはずです。飲み会がなくても、しっかりとしたコミュニケーションを取って円滑に仕事を進めることが求められています。例えば、勤務時間内に面談する機会を作っても良いでしょう。
 
お酒があることで本音が話せるとはよく聞かれますが、お酒がないと本音が話せない関係性が正しいとはいえないのではないでしょうか。本来飲み会は仕事を円滑に進めるための手段ではないはずです。
 
強制しなければ飲み会に参加してもらえない関係性ではなく、「あなたがいる飲み会が楽しいから参加したい」と思わせる人間関係を作る努力ができているか、もう1度考えてみると良いかもしれません。
 

出典

e-Gov 法令検索 労働基準法
厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
 
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士