■ファーマフーズ<2929>の成長戦略



5. 株主還元策

株主への利益還元については、企業の成長性と収益性を両立させる事業方針の下、研究開発、広告宣伝及びM&A等に対する積極的な投資を拡大させながら、株主に対する還元策として配当等を積極的に充実させることを基本方針としている。この方針に基づき、成長投資の推進、財務健全性の確保及び株主還元の強化のバランスを考慮し、自己株式取得を含む総還元性向20%を株主還元策の目安としている。2024年7月期の配当予想は、前期比2.0円減配の20.0円(第2四半期末10.0円、期末10.0円)としており、予想配当性向は31.7%となる。また同社は財務状況の改善及び適切な利益実現の見通しを総合的に考慮し、株価がディスカウントされていると判断し、2024年1月9日〜1月19日に自己株式874,100株を取得(1,000百万円)した。これを含む総還元性向は87.2%となる。



なお資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応としては、ROIC(投下資本利益率)の向上、株主資本コストの低減、成長期待の向上に取り組むため、顧客基盤を生かしたCRM施策の強化による収益獲得、新規事業や新製品の育成による事業ポートフォリオの再構築、研究開発・設備・人的資本投資の拡大、M&Aの積極活用などを推進する。さらに株式市場や投資家との対話機会の増加(IRフェアへの参加、オンライン事業説明会の開催、スモールミーティングの実施、開示資料の英文対応)や、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の強化(非財務情報開示の充実など)による企業価値向上に取り組んでいる。





サステナビリティ経営を強化

6. サステナビリティ経営

同社の事業は、天然由来原料から生命活動と健康維持に関わる食品・化粧品の機能性素材及び製品を開発し販売するという点でSDGs(持続可能な開発目標)に合致していると言える。2021年12月には「サステナビリティ基本方針」を策定し、ESG経営やSDGsへの取り組みを強化している。健康維持の総合サポート企業として「100歳時代に価値ある豊かさと価値ある健康を」というサステナビリティビジョンを掲げ、自社の事業成長が持続可能な社会の実現に貢献できるよう努める。マテリアル(重点課題)としては「人々のQOL向上」「未利用資源のアップサイクル」「多様性の尊重」を掲げ、これらのマテリアリティへの対応を通じて、サステナビリティビジョンの達成とさらなる企業価値の向上を目指す。



トピックスとしては、(国研)国立循環器病研究センターの血管性認知症専門医チームと、「食」による認知機能改善に関する共同研究を2022年4月に開始した。GABAを含む「脳機能カクテル」により、脳の老廃物除去、脳血流の促進、脳神経細胞の活性化などを目指す。また2023年3月には、健康経営に積極的に取り組む優良な法人として、経済産業省より「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定された。また2024年2月には「健康経営アライアンス」(2023年6月設立)に参画し、実践への取り組みとノウハウの共有によって健康経営を推進する。このほか、2025年開催予定の大阪・関西万博に「タマゴは地球人を救う」というテーマで大阪パビリオンに出展予定である。





創薬や卵殻膜素材の高度利用などによる中長期的な成長ポテンシャルは高い

7. 弊社の視点

同社は「ニューモ(R)育毛剤」の発売により収益水準が大きく変化したことで、市場の一部には通販関連企業と位置付ける声がある。しかし同社の本質は、生命活動と健康維持に関わる3つの要素「免疫」「老化」「神経」を開発コンセプトとするバイオテクノロジー企業である。弊社では同社の機能性素材探索、機能性製品開発、さらには創薬や卵殻膜素材を高度利用した新市場創造に至る開発力を高く評価しており、中長期的な成長ポテンシャルも高いと考えている。また企業価値向上に向けた取り組みの一環として、株式市場や投資家との対話の強化を打ち出したことも評価材料となる。今後も、NEDOとの契約に伴う「バイオものづくり革命推進事業」プロジェクト(「繊維」「電池素材」「バイオスティミュラント」)や、田辺三菱製薬とライセンス契約している「自己免疫疾患プロジェクト」の進捗状況に注目したい。



(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)