人口約1万4千人の福島県石川町に激震が走った―。30日に逮捕されたのは現職町長の塩田金次郎容疑者(76)。町内の志賀建設に勤めていた関根徳夫容疑者(69)、添田保雄容疑者(63)に町発注の公共工事の入札前に予定価格を漏らしたとされる。町長と有力企業の癒着の疑いに町内では動揺や失望が広がっている。
 町役場で記者会見した首藤剛太郎副町長は「町長は入札に関してクリーンな印象で、『公平にやらないといけない』と言っていたのを覚えている。非常にショックを受けている」と語った。首藤副町長によると、午前8時ごろ、県警から「情報漏えいがあり、町長を逮捕した」と連絡があったという。
 町によると、町長が入札前に予定価格の基となる設計金額を把握することは可能という。一方で、情報漏えいがあったとされる道路の改修工事について、町は「(職員による)事務手続きは適切に執行されたものと考えている」と説明。落札率についても「高い方ではあるが、同様の率になることは多い」と述べた。工事はすでに完了したという。
 過去にも現職の町長が摘発、有罪判決を受けたことについて報道陣から問われ、首藤副町長は「町民、町に関わる人に謝罪するしかない」と沈痛な面持ちを浮かべた。
 再発防止策については「事務方サイドからの意見も受け止め、取り組むべきことを明確にしていきたい」と語った。
 町は同日、町議会の全員協議会で事件について説明した。町長不在のため、今後は首藤副町長が代理の決裁者を務めるという。
 関根、添田の両容疑者が事件当時に働いていた志賀建設の担当者は福島民友新聞社の取材に、2人が昨年7月まで在籍していたと説明した。関根容疑者が元常務、添田容疑者が元取締役管理部長で「個人的な理由」として同時期に退職したという。
 担当者は、入札の積算は2人が中心となって行い、ほかの社員はどの工事に入札するかは把握せず、結果の報告だけを受けていたとした。近年は落札件数が増えていたが「違和感は感じなかった」という。
 2人と塩田容疑者の関係についても「分からない」と話した。