質素倹約は素晴らしいことですが、あまりにも度を越してしまうと、周囲の人からひんしゅくを買うこともあります。特にお祝いの席では、目に余るケチぶりは控えたいもの。これは筆者が実際に体験した、同僚が社内中の人をドン引きさせたケチケチエピソードです。

「お金がない」が口癖の同僚・K美

私が以前勤務していた会社は、社員30人ほどの介護施設でした。
この職場で困ったのは、あまりにもケチな同僚・K美です。

K美は「お金がない」が口癖で、いつもお金の話ばかりする筋金入りのケチ。
同僚の結婚祝いなども出し渋るほどのケチぶりを発揮していました。

大先輩の退職

ある時、職場の大先輩のおめでたがわかり、退職することになりました。
その先輩は介護技術などを後輩に教えているリーダー的存在の人で、私たち職員全員がとてもお世話になった人です。
今までのお礼も兼ねて、みんなで送別会を開こうと相談しました。

私たちはせめてものお礼ということで、お金を出し合って、これから生まれてくる赤ちゃんグッズを贈ることを決め、送別会当日に渡すことにしたのです。

出し渋り

送別会当日、そろそろお開きという頃に、幹事がプレゼントがあることを発表しました。
プレゼントに賛同したのは、K美以外の職員全員。
寄せ書きと、みんなで少しずつ出し合って買ったプレゼントを贈り、先輩はとても喜んでくれました。

しかし、これに怒ったのはK美です。
「え〜。私、声かけてもらってないんですけど〜。」と騒ぎだしました。

幹事の人曰く、声をかけたが「そんなに世話になってないし…」とカンパを断ったとのこと。
重苦しい雰囲気に耐えきれなかったのか、K美はいきなり財布を出して、あるものを先輩に渡そうとしたのです。

貧すれば鈍する

何と、K美は「じゃあ、私はこれで!」と財布からファーストフード店のクーポンを取り出し、そのまま先輩に渡しました。
これには出席者全員がドン引き。

先輩は「K美ちゃんは相変わらずね。でも貧すれば鈍するということがないようにね。」と笑っていました。

『貧すれば鈍する』とは、貧乏になると性質や頭の働きまでも鈍くなり、さもしい心をもつようになるという意味です。
先輩は、ケチな言動が目立つK美を諭してくれていたのですが、K美は『貧すれば鈍する』の意味が分からず、ニコニコと笑っているだけでした。

その後

先輩の送別会以降、K美が職場で距離を置かれたのは言うまでもありません。
その後、K美は転職をすることになりましたが、誰も送別会をやろうとは言い出しませんでした。

K美は決して貧乏だったわけではありません。
自分に使うお金は、躊躇わずに使っていたからです。

節約したいという気持ちはいいのですが、お世話になった先輩のお祝いを出し渋るのは、決して美徳とは言えませんよね。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:RIE.K