日本経済再生には個々人のお金との向き合い方こそ重要――。『三千円の使いかた』で、家族3世代・女性4人がお金と人生に向き合う姿を描いた原田ひ香と、『きみのお金は誰のため』で、大富豪(ボス)が解説する「お金の本質」が話題を呼んだ田内学が対談。“マネー小説”のベストセラ―作家2人が示す、本当の豊かな暮らしにつながる「仕事・経済・社会」の捉え方(構成◎福島結実子 撮影◎尾形文繁)

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「***でする貯金」には意味がない

原田ひ香(以下、原田):『三千円の使いかた』で、登場人物の一人・真帆(専業主婦で、夫と娘の3人家族)は貯金をしています。一方、田内さんの『きみのお金は誰のため』のなかで、ボスは「お金を貯めても意味がない」と教えます。その理由は、自分がお金を払ってお願いしたいことを「やってくれる人」がいなければ、いくら貯金があっても叶いません。だけど真帆が1000万円を貯めようとしているのは、安心感がほしい以外に子どもの養育費なども考えているからです。そういう貯金なら意味がありますよね?

田内学(以下、田内):おっしゃるとおりです。僕も貯金していますし(笑)この本のなかでボスが言っているのは、「みんなで貯金をしても意味がない」っていうことなんですよね。

原田:なるほど。「みんなで」というところがポイントなんですね。

田内:少子化が進み、超高齢社会で働く人の割合が減っていくから、年金だけでは2000万円不足すると言われています。そのため、今の日本では、老後に備えるために“みんなが”お金を貯めようとしている。将来、そのお金で、食糧を買ったり、医療サービスを受けようと思っている。だけど、根本的な問題は、働く人が減っていって生み出されるモノやサービスが減っていくことにあります。お金を貯めていても、モノやサービスが足りなければ、物価が上がるだけです。みんなでイス取りゲームをするイメージです。より多くのお金を持っている人はイスに座れるけど、そもそもイスが足りないんだから、根本的な問題は解決しないんですよね。お金集め競争が激化するだけなんです。この問題を解決するには、子育てしやすい環境を作ることや、働く人が少なくなっても社会が回るように、生産効率をあげておくことだったりします。