若い研究者たちを応援したい

修士課程で赤道への研究航海に出る前、私は民間企業への就職が決まっていました。でも航海中、急に惜しくなってしまった。就職したら、集めたサンプルは後輩たちが分析することになりますから。船上で「博士課程に進もう」と考え直しました。

親には嘆かれたけれど、どうも私は楽しそう、面白そう、という興味に引かれて人生の行き先を決めてきた気がします。

研究者とはそういうものなのかもしれません。そして要所要所で先生方の面白そうな話を聞き、背中を押される場面がありました。私も一昨年からはじめて教育者になったわけですが、転向を決めたのも若い未来の研究者に現場の楽しさを伝える存在でありたいと思ったからです。

私が学生のころは、女性が理系の大学へ進むこと、ましてや研究者を目指すことはまだ珍しい時代でした。そういえば私の大学院進学を知った男性の先輩は、「あなたが院に行ったところで何の役に立つかわからないんだから、結婚したほうがいいんじゃない」と言っていました。

そのときは軽く聞き流したけれど、30年以上経ったいまも覚えているのだから、それなりに思うところはあったということですよね。(笑)

私には子育てと研究を両立する自信がなかったので、子どもを持ちませんでしたが、ここ東京大学柏キャンパスにも保育園が完備されているように、女性のライフイベントを支援する体制は少しずつ整ってきています。それでも本人たちは悩む。どの道にも真剣に向き合いたいと願う以上、当然のことです。

だから私は女性研究者や、研究者を目指す女子学生も支援していきたいですね。「これが私の挑戦だ」と思うことがあるなら躊躇したり諦めたりせずにトライしてほしいですし、悩んでいる方には、「いまや南極地域観測隊の隊長も女性なんだから」と、この記事を思い出して前に進んでもらえたら嬉しいです。