張奕は2022年オフに森友哉の人的補償でオリックスから西武へ移籍

 球団マネジャーからの着電で、ある程度予想はできた。今季から台湾プロ野球の台鋼ホークスに練習性として加入した張奕投手は、2022年オフに森友哉捕手の人的補償でオリックスから西武へ移籍した。突然の移籍には戸惑ったが、「チャンスだと思いました。自分でいいんですかって感じでした」と前向きに捉えた。

 2022年12月、家族とともに大阪から関東へ旅行に出かけた時だった。東京行きの新幹線で電話が鳴った。球団のマネジャーからだった。「『ちょっと球場に来てくれる?』って言われたんですけど、『すみません。静岡まで来てしまいました』って(笑)」。電話の相手が福良淳一GMに代わり、人的補償での西武移籍が伝えられた。

 2022年、オリックスはパ・リーグ連覇を成し遂げ、26年ぶりの日本一に輝いた。張奕もキャリアハイの15試合に登板し、防御率2.38をマーク。しかし、同年は阿部翔太投手が防御率0.61という圧倒的成績を残し、さらにのちに野球日本代表「侍ジャパン」にも選出された宇田川優希、山崎颯一郎両投手なども台頭。救援投手陣が飽和状態だった。

 そのため、キャリアハイを残しても、自分がプロテクトから漏れていることに驚きはなかった。「普段はこんなタイミングでマネジャーから連絡は来ない。もう絶対そうだなという感じでした。『西武側から張くんが指名されました』って言われて。『そっかそっか』って感じでしたね」。

人的補償は「まだ必要とされていると気付けたんです」

 仲も良く、苦楽を共にしたオリックスナインと離れるのはつらかったが、移籍はチャンスだと捉えた。4月21日からのオリックス3連戦では森から挨拶され、お互いの過去の話で盛り上がったという。その2日後の23日には移籍後初対戦。右飛に抑えた。

 西武では怪我にも苦しみ、結果的にわずか5試合の登板で防御率9.00。オフに予想外の戦力外通告を受けた。「人的補償で結果を残せなくて申し訳ない気持ちでしたが、西武には感謝はしています」と明かす。

「人的補償って自分がそのチームから選ばれている、僕がまだ必要とされていると気付けたんですよ。だからもう一度同じような場面があったら、僕は喜んで行くと思います」。旅行中に決まった関東生活は1年で終わったが、後悔は全くなかった。(川村虎大 / Kodai Kawamura)