張奕は昨オフ西武をわずか1年で戦力外に「正直、まさかでした」

 プロの世界は厳しいとはわかっていたものの、もう少しチャンスがあると、心のどこかで思っていた。今季から台湾プロ野球・台鋼ホークスに練習生として加入した張奕投手は昨オフ西武から戦力外通告を受けた。人的補償で加入してからわずか1年。「正直、まさかでした」と率直な気持ちを打ち明ける。

 2022年にFAでオリックスに加入した森友哉捕手の人的補償で西武へ移籍した。同年はオリックスで15試合に登板。キャリアハイとなる防御率2.38の成績をマークし、西武でも中継ぎの一角として期待されていた。しかし、2月に右肩の炎症が見つかり、キャンプは2軍スタート。2023年3月に開催されたWBCではチャイニーズ・タイペイ代表に選出されていたが、辞退を余儀なくされた。

 4月に移籍後初登板を果たしたが、5試合で防御率9.00。右肩痛も再発し、5月2日に登録を抹消された。以降は昇格できず10月、球団マネジャーの電話で球団施設に呼ばれた。

 支配下登録の選手が育成契約になるときには一度、自由契約となってから打診される。移籍してまだ1年。「育成契約はあるんじゃないかと思っていました」。淡い期待は裏切られた。「『来季はもう契約しません』と言われて、『からの……』と思って(育成契約の打診を)待っていましたが、そのまま終わってしまいました」。当時を振り返って苦笑いする。

トライアウトを受検…早朝5時から練習する日々

 わずか1年での戦力外。「凄く精神的にはダメージきましたね。そして、周りから『何で獲ったんだ』と言っているという声も耳に入ってきました」。複雑な気持ちだった。とはいえ「自分では変えることはできないんで。前向きに、後悔のないようにと」。11月の12球団合同トライアウトを受けることを決断した。

 トライアウトまでの1か月半はチームの練習が始まる前、早朝5時に球場へ向かい練習に明け暮れた。西武のスタッフは朝から練習に付き合ってくれたという。「本当にありがたかったです。感謝しかないです」。

 トライアウトでは打者3人に対し、1奪三振、2四球という結果に終わり、NPBからのオファーはゼロ。台湾へ戻る決断をした。右肩の調子も戻りつつある。台湾プロ野球でプレーするためにはドラフト会議を経る必要があるため、今は練習生契約。「どうなるか正直わかりませんけど、まだやれると思っているので」。選手人生をここであきらめるつもりはない。(川村虎大 / Kodai Kawamura)