これまでオノフの『AKAドライバー』はつかまり性能をメインにクラブ設計が施され、「今作もその伝統が継承されている」とクラブ設計家の松尾好員氏は分析する。さらに『AKAドライバー』初の「スライドウェイト」により、重心深度や重心距離を自分好みにカスタマイズできるようになった。

アドレスでつかまり顔のくどさがない

GD 今回はグローブライドの『オノフ ドライバー AKA』を前作2022年モデルと比較しながら分析してもらいます。『AKA ドライバー』と言えば”やさしくつかまる球が打てる”という印象がありますが、今作はいかがでしたか?

松尾 今回の『AKA ドライバー』も歴代の系譜である、つかまりを意識して作られていると感じました。

GD 具体的にどのヘッドデータから感じられましたか?

松尾 それはフェース角とライ角の2つです。フェース角がフック側に1.5度、今作がフック側に0.5度。ライ角は前作が60.5度、今作が61.0度とアップライトな設定で”つかまるAKA”は健在でした。

GD なるほど。つかまり顔というとアドレスでフェースがかぶって見えることがありますが、いかがでしたか?

松尾 違和感なくアドレスできました。前作よりも今作のフェース角が0.5度と小さく設定されているのが理由のひとつかもしれません。

GD 他に『AKA ドライバー』の特徴はありますか?

松尾 つかまりやすいことに加えて「球の上げやすさ」があります。それを裏付けるヘッドデータは「フェースの高さ」と「スイートスポットの高さ」、それと「低重心率」の3つです。フェースの高さが前作は56.2ミリと標準的でしたが、今作は54.9ミリとややシャローフェースになっており、スイートスポットの高さが前作の36.4ミリに対して、今作は37.3ミリと高くなっています。スイートスポットの高さがフェースのどのあたりに位置しているかを表す低重心率は前作が64.8%、今作が67.9%と高くなっています。

GD 今作は前作よりもフェースの高さを低く、スイートスポットの位置を高くしたことでさらに高重心になり、前作よりもスピンが入りやすく弾道が安定する設計になっているのですね。ここまでヘッドデータをもとに分析していただきましたが、今作はAKA史上初のスライドウェイトが搭載されています。

松尾 はい。ヘッド後方からヒール側にかけて設計されていることから、重心深度と重心距離を調整することができます。

GD ヘッド後方が「ハイ」、ヒール側が「ドロー」、その間に3カ所のポイントがあるので合計5段階の設定ができます。調整具合でクラブ性能の変化は感じられましたか?

松尾 「ドロー」で打つと重心距離が近く設定されることで、さらに球がつかまりました。逆の「ハイ」だと重心深度が深く設定できるので球が上がりやすかったです。

GD スライドウェイトのおかげで今までのAKAではつかまりが物足りなかったり、もう少しスピン量を増やして、弾道を安定させたかったゴルファーによさそうですね。今作の「AKA 」はどんなゴルファーにオススメですか?

松尾 普段使っているドライバーだと右へのミスショットが多く、スピン量が足らずにドロップしてしまうゴルファーにいいでしょう。

チタンフェースらしい打感!

ここからは実測データをもとに凄腕シングルでもある松尾氏にクラブ分析と試打レポートをしてもらいます。試打および計測ヘッドは7番、シャフト「SMOOTH KICK MP-524D」でフレックスSです。掲載数値はすべて実測値となります。

クラブ長さが45.38インチと「やや長く」、クラブ重さが301.5グラムと「標準的」ですが、グリップエンドのウェイトによるカウンターバランスで、スウィングウェイトがD0.0と「やや小さく」、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが287万g・㎠に抑えられています。
計測数値のみで推察するとドライバーのヘッドスピードが43㎧くらいのゴルファーにとって、タイミング良く振りやすくなっています。

ヘッド形状はヘッドの横幅が広く、投影面積が大きくなっているので、アドレスで安心感があります。

実際に試打したところ、アドレスでは日本モデル特有のつかまり顔でかつ、61.0度と非常にアップライトなライ角のおかげで球をつかまえるイメージが出ています。シャフトはやや軟らかめながらもインパクトの再現性が良く、ヘッドスピードが40㎧くらいのゴルファーでもリズム良くスウィングできます。

ヘッドのソール面にはスライド式のウェイトがあり、位置を調整しながら弾道やボールのつかまり具合をカスタマイズできるところが特徴です。リアルロフト設定はやや小さめですが、ボール初速が出しやすく、インパクト音はチタンフェースらしいやや高めでした。

重心距離が長いことでネック軸回りの慣性モーメントが大きくなっています。ダウンスウィングでのヘッドの返りはやや遅くなりますが、シャフトのしなりの良さから、球をつかまえやすくなっています。

グリップエンドのウェイトのおかげで、手元側の動きが安定してヘッドスピードが速くなりました。スライド式のウェイトを「ハイ」にしたときは、適度なスピンが入って、より安定した高弾道の球を打つことができ、キャリーが伸びました。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年5月7、14日合併号「ヘッドデータは嘘つかない!」より