50歳ごろから現れる“膨れるホクロ”は、じつはがんかもしれない。そう言われると心配になるが、「そこまで神経質にならなくていい」という。皮膚腫瘍外科指導専門医で「あきおか形成外科」(大阪府高槻市)の秋岡二郎院長がこう続ける。

「黒いホクロと見分けるのが難しい『基底細胞がん』は、悪性度が非常に低いのです。死に至るというケースはほぼないので、慌てる必要はありません。そうはいっても、がん細胞が大きくなってしまうと転移する場合もありますから、小さいうちに取っておいた方がいいと考えます」

 膨れるホクロと基底細胞がんの見分けがつきにくいのは、ほぼ同じ場所にできるからだという。どちらも鼻や眉毛の近く、そして目のキワあたりに現れやすい。見た目の特徴としては、基底細胞がんが無機質で黒々としているのに対し、ホクロは茶色が少し混じっていたり、ちょっと色が薄かったりする。また、基底細胞がんはややギザギザでいびつな形をしているが、ホクロは真ん丸に近い。つまり、見るからに“禍々しい”ようであれば基底細胞がんの可能性があり、なんとなく“おとなしそう”に見えるならホクロと考えられる。

 とはいえ、われわれ一般人にその判断は難しい。

「以前、こんな患者さんがいました。鼻の下のホクロを取りたいということで、当院に来る前に、手術を行っていないクリニックで焼いて取ったのですが、またホクロが出てきた。もう一度繰り返したけれど、やっぱり治らない。そこで当院を紹介され、診てみたら基底細胞がんでした。そういうケースもまれにあるのです。見分けるためには、形成外科を受診するか、専門医のいる皮膚科にかかって診てもらった方がいいでしょう」(秋岡院長)

 年をとってから大きいホクロができたら、自己判断せずに早めに受診したい。 (おわり)