【時間栄養学的「気になる食品」】納豆

 日本人の食卓に馴染みの深い納豆の歴史は古く、縄文時代の終わり頃にはすでに納豆のようなものが食べられていたと言われます。この頃、中国から稲の栽培方法が伝わり、人々が暮らしていた竪穴式住居に使われていた稲わらには納豆菌が豊富に存在していて、大豆が偶然、発酵する可能性があったからとも考えられています。

 奈良時代にお坊さんがお寺の納所で納豆を作っていたことから「納所豆」と呼ばれており、縮んで「納豆」となったという説や、神様に感謝し神棚に供えた煮豆にしめ縄が触れ、稲わらに住みついた納豆菌が繁殖したことから「納めた豆」が縮んで「納豆」と呼ばれるようになった説など、名前の由来は諸説あります。

 なんとなく日本特有のイメージが強い納豆ですが、なんと外国でも製造されています。といっても、中国の「タチオ」やアジア諸国の大豆加工品のほとんどには、日本の独自のネバネバ感はなく、調味料や保存食として利用されています。その中で、ネパールの「キネマ」やインドの「バーリュ」などは、味や香りが日本の糸ひき納豆に近いかもしれません。

 ネバネバの納豆になる理由は、大豆が納豆菌の存在下で発酵するためです。稲わらには約1000万個の納豆菌が胞子の状態で付着しており、大豆がこれらの菌と接触することで発酵が起こり、ネバネバの特有の食感が形成されたと考えられています。

 1980年代に、倉敷芸術科学大学の須見洋行教授が血栓を溶かす作用の強い「ナットウキナーゼ」という酵素が納豆のネバネバ成分に含まれていることを発見し、高血圧や高脂血症予防をはじめとした健康効果が注目され続けています。

 血栓が出来やすいのは明け方のため、夜に食べることで血栓症の予防ができる可能性があります。ただし、ナットウキナーゼは酵素のため熱に弱い。タンパク質を摂るための朝食では熱々のご飯に乗せても問題ありませんが、ナットウキナーゼを摂取する目的であれば加熱せずに食べることをおすすめします。

 その他にも、納豆に含まれるビタミンKやパントテン酸は、朝型の方や社会的時差ボケの少ない方が多く摂ってる栄養素でもあります。目的に応じて、いつ食べるかを考えてみてはいかがでしょうか。

(古谷彰子=愛国学園短期大学准教授/早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員)