手軽に食べられて、一年中手に入る果物のバナナ。食べようと思ったら黒くなっていて、食べていいか悩んでしまった経験がある人は多いでしょう。とくに、冷蔵庫に入れると黒くなりやすいと聞きますが、本当なのでしょうか。バナナの皮や果肉が黒くなる理由について、福岡県北九州市で青果仲卸業を営む、小林青果株式会社 代表取締役社長の岩本良一さんに話を伺いました。

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バナナに現れる黒い斑点 “シュガースポット”とはどんな状態?

 バナナは皮が緑色のうちに収穫され、食卓に届くまでに熟成が進みます。少し青みが残った状態のバナナは、糖度が18度ほど。全体がきれいな黄色になると20度ほどになります。

 さらに熟すと、表面に黒い斑点がポツポツと出てきます。この黒い斑点は、ポリフェノール(タンニン)が酸化酵素と反応して出現する“シュガースポット”と呼ばれるもので、「熟成して甘みが増している」というサイン。この状態になると、糖度は22度前後にもなります。

「バナナの甘酸っぱさとしっかりとした食感が好きな人は、少し青さが残っている状態がおすすめです。バナナの甘さと食感を楽しみたい人は、全体が黄色く色づいた状態がいいと思いますね。“シュガースポット”が出始めると甘みが最高潮になり、食感はねっとりとやわらかになります」

 バナナは、熟成が進みすぎると実がやわらかくなりすぎてしまい、味も落ちてきます。一番おいしいと感じる時期には個人差がありますが、岩本さんのおすすめはやはり「“シュガースポット”が出始めた状態」なのだとか。

冷蔵庫でバナナを保管すると皮全体が黒くなる理由

 うっかり食べ忘れて、バナナが“シュガースポット”で埋め尽くされてしまうことがあります。見た目が悪いため、食べてもいいものか悩む人もいるでしょう。

 岩本さんによると、「熟度がかなり進んで傷む一歩手前の状態ですが、皮をむいて、中身が黒く変色していなければ食べられる」とのこと。「実に黒くなった部分がある場合は、取り除いたほうがいいでしょう」とアドバイスします。

 実が黒くなる原因には、熟しすぎるほかに、外からの衝撃やバナナ自体の重みによって皮に傷がつき、傷みが広がる場合もあります。すでに傷み始めているため、このケースでもやはり黒い部分は食べないほうがいいでしょう。

 その一方で、「冷蔵庫にバナナを入れると黒くなる」と聞いたことはないでしょうか。これは、前述した“シュガースポット”の黒点とは異なり、「低温障害」が原因です。

「低温障害とは、追熟が止まった状態です。バナナは冷気に弱いため、冷蔵庫に入れると皮の細胞が壊れ、酵素の働きが活性化します。すると、抗酸化物質であるポリフェノールが作られて皮が黒くなります。ただし、この場合は皮をむいて実が白ければ食べられます」

 低温障害は熟していない青いバナナでも起こり、この場合はくすんだ黒っぽい色になります。こうした現象を、青果業界では「バナナが風邪をひく」と言うのだとか。

自宅でバナナを保管 おいしく長持ちさせるためには

 これから暑くなると、追熟が進みやすくなります。バナナを長期間おいしく保存するには、どうすればいいのでしょうか。

「バナナは、追熟を促すエチレンガスを自ら発生させます。それは自らの熟成を促すと同時に、周りの野菜や果物にも影響を与えてしまいます。なので、長持ちさせるためには一本一本を切り離して保存するのがポイントです」

○自宅でバナナを冷蔵保存する方法
1. 自分の好みの熟度になるまでは常温で保存する
2. 好みの状態になったら、房から切り離し、1本ずつビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存する。追熟を止めることで常温よりも長持ちする

 また、たくさんのバナナがある場合は「冷凍保存もおすすめです」と岩本さん。

○自宅でバナナを冷凍保存する方法
1. 好みの熟度までは常温で追熟する
2. 好みの熟度になったら、皮をむいて一本ずつラップにくるむ
3. ひとくち大にカットして、重ならないようにタッパーに並べてもOK。あとは冷凍庫へ

「すぐに食べるのか、数日かけて食べるのかで、好みの熟度のバナナを選ぶといい」という岩本さん。甘いバナナをすぐに食べたいときは、“シュガースポット”がすでに出始めているバナナを選ぶといいそうです。


◇小林青果株式会社
福岡県北九州市にある、北九州市中央仲卸市場内に本社をかまえる青果仲卸業者。主に九州を中心に市場に集められた新鮮な野菜や果物を卸業者から競り落とし、小売業者へ販売している。その目利きには定評があり、スタッフ一同がおいしい野菜や果物で消費者を笑顔にすることを信条としており、ECサイト「うまうまもぐもぐ」も運営している。

Hint-Pot編集部・出口 夏奈子