◆東宝ゴジラルーム室長・吉川哲矢氏(42)

 日本が世界に誇る人気怪獣「ゴジラ」が、2024年上半期、国内外の映画の興行をけん引した。3月に米アカデミー賞視覚効果賞を受賞した「ゴジラ―1.0」は、昨年11月から約7か月にわたりロングラン上映中。4月から日本でも公開中の米映画「ゴジラ×コング 新たなる帝国」は、世界興収5・7億ドル(約895億円)を記録している。

 日米ゴジラ作品の大ヒットの裏には、ゴジラのブランドを守り、発展させてきた“専門組織”の存在がある。配給の東宝に設置された組織「ゴジラ戦略会議」(通称・ゴジコン)と、ゴジラビジネスに特化した部署「ゴジラルーム」だ。その両組織でリーダーのポジションを務める吉川氏は、それぞれの役割を明かす。

 「まず、2014年発足の『ゴジコン』は他部署と兼務の形で、ゴジラをより愛されるコンテンツにするためのアイデアを出し合うプロジェクトです。経理や不動産などから横断的に人が集められ、現在は15人が参加している。成功例の一つが、歌舞伎町の新宿東宝ビルのゴジラヘッドです」

 一方、吉川氏やゴジラ作品の助監督経験者ら14人による「ゴジラルーム」は、兼任ではなく専属部署。16年の「シン・ゴジラ」大ヒットを機に設置され、ゴジラビジネス全般を担う。主な仕事は「〈1〉ブランド毀損(きそん)有無の確認」だ。

 「『ゴジラルーム』設置に当たって過去のゴジラ作品を全て研究し、根底にある約束事を明確化した『ゴジラ憲章』を作成しました。基本は憲章に従って、映像や商品などに毀損がないかをチェックします」

 ブランドを守るための細かなルールがある。

 「大きなところだと、『ゴジラは完全に死なない』という設定や『ゴジラは人やものを捕食しない』などルールがあります。『―1.0』も脚本段階から確認作業に当たりました。ハリウッド版も同様です。感覚ではなく、約束や原則を明確にして管理することが作品の信用にもつながります」

 「ゴジラルーム」の重要な業務として、「〈2〉ブランド力の向上」もある。

 「マクドナルドや遊園地とのコラボや、ゴジラストアの拡大など、映画以外のタッチポイントを増やす工夫を地道に続けています。映画がない期間も、いかに既存のファンを楽しませ、若年層の新規ファンを獲得できるかが勝負です」

 今後は世界市場を視野に、新規ビジネスやファンイベント開催も前向きに検討中。ゴジラ熱はさらに加速していきそうだ。(奥津 友希乃)