◆JERA セ・リーグ 阪神2―0巨人(17日・甲子園)

 私が現役時代の近鉄ベンチは、西武の若手捕手だった伊東勤氏をよくヤジっていた。「どこ見とんねん。自分でサイン出せ」と。コーチがベンチから伊東氏に配球を指示していたのだ。しかし、そうやって経験を積んだ伊東氏は球界を代表する名捕手になった。

 巨人の阿部監督は同じ手法で若い選手を育てている。2試合連続スタメンの岸田が前日の山崎伊に続いて、赤星を好投に導いたのだが、その動きを見ると、元捕手の阿部監督がベンチからサインを出していたようだ。責任は俺が取る―。監督がこういう姿勢を示してくれれば、若い選手は心強く感じる。

 赤星は昨年、コースが甘くなる傾向があった。ボールが1、2個分、狙いより中に入ることが多かった。慎重になりすぎたり、精神面の問題だったと思う。だが、この日は大胆に投げていた。岸田も「腕を振れ」というジェスチャーで赤星を引っ張るなど、思い切ってプレーしていた。阿部監督が支えてくれているという安心感があるから、逃げの投球にならなかった。敗れたものの、5回2失点という結果は、赤星も岸田も自信になったはず。阿部監督がまいている種はいずれ花開く。(スポーツ報知評論家・金村 義明)