◆米大リーグ レッドソックス1―3ジャイアンツ(2日・米マサチューセッツ州ボストン=フェンウェイ・パーク)

 レッドソックス・上沢直之投手(30)が2日(日本時間3日)、本拠地・ジャイアンツ戦で2点ビハインドの8回から5番手で救援登板してメジャー初登板を果たし、2回無安打無失点1奪三振で、6人をパーフェクトに抑える鮮烈デビューを飾った。

 悲願の舞台が巡ってきた。8回。ラテン音楽の人気歌手ファルコの「ペパス」に乗って、背番号「39」が、ブルペンから聖地のマウンドに走った。先頭から三邪飛、三飛の後、コンフォートを、87マイル(約140キロ)のスプリットで空振り三振。ベンチに戻ると、負傷者リスト(IL)入りしている吉田正尚外野手(30)ら、ナインにハイタッチで迎えられた。

 「チームから言われて、3Aでやってきたことを試合で出すことが出来た。点を取られなかったこと、ああいう展開でチームの攻撃につなげられたことは良かったと思います。すごく興奮しました。そんなに緊張しないかなと思っていたけど、(マウンドに)上がってみたら、不思議な感覚におちいりました。やっぱり、緊張するよな、って思いながら投げていた」

 2イニング目の9回は遊ゴロ、ニゴロ、遊ゴロの3者凡退。直球の最速は92マイル(約148キロ)。僅差の展開で2回を無安打無失点で抑える好投だった。直球の最速92マイル(約148キロ)で、もっとも遅いカーブは76マイル(約122キロ)。緩急を使った全19球。打者6人の勝負球は全てスプリットで、19球を投げて14球がストライクで、ストライク率は74%。空振り3、ファウル3。打球は外野に飛ばなかった。

 最後に試合で投げたのは、先月21日(同22日)の3A登板。先月28日(同29日)の初昇格から3試合は出番がなかった。試合前にもブルペンで32球の投球練習をした右腕が、中10日のマウンドで腕を振った。

 パドレスの松井裕樹、ドジャースの山本由伸、カブスの今永昇太の3投手に次いで、今季は日本人4人がデビュー。同一シーズンで4投手デビューは、2007年から3年間続いて以来となる最多タイだ。他3人の同期移籍組と比べ、上沢はいばらの道を歩んだ。マイナー契約で、メジャーキャンプ招待選手から出発。日本時代のスライダー、チェンジアップ、スローカーブを手放し、直球とスプリットを軸に持ち球を絞った。スプリットをストライクゾーンの中に落とすようにコースを整備。使用率をアップさせ、配球を立て直した。

 「こっち(メジャー)では、速い球で勝負しようと思っていない。他の球種を使いながら、いかに直球を速く見せるかというところ。そういう作業が大切だと思う。3Aで過ごした時間は無駄じゃなかった。色々あったけど、あの期間が今、生きていると思います」

 日本人投手で、デビュー戦に2回以上を投げて走者を1人も出さなかったのは、初の快挙。球団史でも1958年4月20日のアル・スクロール以来となった。メジャー第1球と初三振の記念球をゲット。「これからも、任された役割でしっかり仕事をしたい。どんな展開でも長いイニングを投げられるように頑張りたいです」と前を見据えた。誕生日は、99歳違いのベーブ・ルースと同じ2月9日。伝説のスターも踏んだ聖地のマウンドから、大リーガー「上沢」が、その第一歩を踏み出した。