●本社記者ルポ

 能登半島地震で通行止めとなっていた国道359号県境部の小矢部市3・7キロと金沢市6キロの通行が11日、約5カ月ぶりに再開した。小矢部市内山での仮設道路整備が完了し、富山、石川県間の一般車の往来がようやく可能となった。ドライバーや地元住民からは「通勤が楽になる」「再開を待ち望んでいた」との声が相次いだ。(小矢部支局長・大能直人)

 仮設道路は延長約150メートル、幅員6メートルの片側交互通行とし、幅員11メートル、片側1車線の国道359号に接続している。崩落した路面を迂回する形で山側に設けた急カーブの道である。

 地震発生後、内山地区を何度か取材で訪ねただけに、再開の瞬間をこの目で見ようと車を走らせた。午前10時前には5台の車が列を作っていた。一度戻りかけて再び列に付く車も見られた。

 金沢市へ向かう富山市の会社員男性(43)は「地震後は通勤に約2時間かかり、高速道路を使う日もあった。再開が早まったのはありがたい」と話した。

 早期再開への思いは県高岡土木センター小矢部土木事務所も同じのようだ。再開は当初予定より約1週間早い6月下旬を見込んでいたが、さらに約1週間の前倒しにこぎ着けた。転落防止柵の設置、電柱移設などの工事を早め、崩落土砂の撤去を行っていた県央土木総合事務所(金沢市)との調整も急いだという。

 地元でも歓迎の声が聞かれた。小矢部市側の通行止めの起点は同市末友の村の駅きたかんだの郷前の交差点であり、村の駅は石川県側からの客足に影響が出ていた。駅長の渋谷正明さん(76)は「交通量が戻り、金沢ナンバーも増えた気がする。落ち込んだ売り上げが回復してほしい」と期待を寄せた。

 ただ、仮設道路の近くまで行くと、地震前と同様の速度を出すのは難しいと実感した。軽トラックで通った内山町内会の齊藤清区長(80)も「意外と道幅が狭かった。仮設道路はありがたいが、本格復旧ではより安全な道にしてほしい」と語った。

 仮設道路は長さ12メートルを超えるトレーラーなどは通行できず、冬季は大型車の通行制限を予定。本格復旧に向けた工事は年度内の着手を見込む。

 県は今後、崩落した路面の現状復旧を行う。現在、道路の補強工事も含めた設計を行っている段階で、本格復旧の完了時期は未定だ。地震前の状態に戻るまでには道半ばだが、まずは大きな一歩を踏み出したと思いたい。