およそ3000万年前から姿を変えず、「生きた化石」とも呼ばれるオオサンショウウオ。

世界でも、北アメリカと中国の一部にしか生息していない希少な生き物です。

 

国内のオオサンショウウオ

 

なかでも、絶滅種と言われているのが、中国固有の「スライゴオオサンショウウオ」。

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、極めて絶滅の恐れが高い種とされています。

そんな「スライゴオオサンショウウオ」が日本にいることが発見されました。

京都大学の研究チームが、国内のオオサンショウウオの交雑状況について調べていたところ、生存する2匹の「スライゴオオサンショウオ」が見つかったのです。

京都大学の西川教授によると、「現地では食用や薬にするために捕獲したり、色々なオオサンショウオを混ぜて養殖したりしていたので、もとの遺伝的な多様性が失われて、恐らく野生にはいないのではないかと言われている。確実に生きている個体は、今回見つかった個体だけなので、大変貴重」とのこと。

 

京都大学の西川完途教授

 

発見された2匹のうちの1匹がいるのが、広島市の安佐動物公園です。

1986年に大阪で保護され、兵庫県の水族館で飼育されたあと、2008年に安佐動物公園にやってきました。(※一般公開は行っていません。)

 

安佐動物園のスライゴオオサンショウウオ

 

スライゴオオサンショウウオは、体の色が黒く、薄茶色の斑紋があるのが特徴です。

茶色の体に、黒い斑紋がある国内のオオサンショウウオとは、見た目の違いがあります。

 

国内オオサンショウウオとの比較(左がスライゴオオサンショウウオ)

 

体長は1m36cm。年齢は38歳以上と見られ、1日1回、魚などのエサを食べて生活しています。

 

エサを食べるスライゴオオサンショウウオ

 

安佐動物公園でスライゴオオサンショウウオの飼育を担当している原さんは、「標本数が少ないので、はっきりしたことはわかっていないが、中国にいるオオサンショウウオのなかでは最大の種ではないかと言われているので、これからもっと長生きしてくれれば、さらに大きくなると思う」と話します。

 

安佐動物公園でスライゴオオサンショウウオの飼育を担当している原 廣史朗さん

 

安佐動物公園では、開園当時からオオサンショウウオの飼育に取り組み、国内で初めて飼育下での繁殖に成功するなど、多くの知見を蓄積してきました。

こうしたノウハウを活かして、今後もスライゴオオサンショウウオの飼育を続け、生態の研究を行っていくということです。

 

スライゴオオサンショウウオ

 

今回、国内で発見された2匹のスライゴオオサンショウウオは、いずれもオス。

京都大学の研究チームでは、保管されているメスの細胞を使って、クローン個体を作り出すなど絶滅を防ぐ取り組みを進めることにしています。

 

京都大学の西川教授は、絶滅種の保全について、「世界的に希少な種が日本に残っていたのは、日本の飼育技術の高さや動物を大事にするような文化や歴史があったからだと思う。色々な生き物が絶滅すると、大きく生態系が崩れたりして、結局人間にとっても不利益が生じるというのが一般的な考え方。それを防ぐ一歩として、目の前の絶滅の危機にある生き物は、可能であれば維持して、保全して残すほうが人間にとってもいいのではないかと私自身は信じている。」と語りました。

 

インタビューに答える西川完途教授

 

 

 

 

広島ホームテレビ『ピタニュー』
地球派宣言コーナー(2024年5月22日放送)