【あわせて読みたい】「病院代が払えない」。76歳夫が入院中の妻を絞殺したと供述「もうこれ以上は世話ができなかった」

思いもかけないサプライズな贈り物に、卒業生から歓喜の声が上がったーー。

アメリカ・マサチューセッツ州にあるマサチューセッツ大学ダートマス校で5月16日、卒業式が行われた。地元の篤志家、ロバート・ヘイル氏が1200人の卒業生全員に1000ドル(約16万円)の現金を配った。込められた思いの深さに、会場から大歓声と拍手が起こった。

ヘイル氏は法人向けにテレコムサービスを提供する会社の創業者でありCEO(最高経営責任者)だ。この日は、大学が日ごろの慈善活動を称えるため、妻と一緒に卒業式に招いていた。

壇上でのあいさつに立ったヘイル氏は、降りしきる雨の中で傘をさし、雨ガッパ姿で耳を傾ける卒業生に「君たちはコロナ禍を乗り越えました。私の57年の人生からしても、アメリカにおける最も困難な時期だったと思いますが、君たちは乗り越えたのです」と語りかけた。

社会人の先輩として自身の経験についても触れた。1990年に初めて起業し、上場もして一時はフォーブスの長者番付で40歳未満のくくりで7位になったこと。経済状況の悪化を受け、株価が下がり続け、資金繰りに窮して破産申請したこと。やむなく解雇を告げた従業員の家族から殺害予告を受けたことなど。「心に刻まれている大きな失敗ですが、私は諦めませんでした」とチャレンジを続けたことが現在の成功につながっていると強調した。

「失敗は前に進むための過程の一部にすぎません。失敗や失敗を恐れる気持ちを逆手に取り、自分を奮い立たせることができれば、人生はすばらしいものになります」と語った。

ヘイルさんは、人のために行動することが実は自分の幸せにつながるというメッセージも送った。

高校を卒業し、移り住んだ土地で地元の一員になりたいと感じたヘイルさんは「自分にできることで貢献してみよう」と子ども支援の取り組みに参加した。12歳の少年のメンターとなり、高校卒業、大学進学、修士号取得、結婚式と人生の節目に立ち会ってきた。家族さながらの付き合いが今でも続いているというエピソードを披露した。

「君たちに『与えること』を勧めたのだから、私も行動で示そうと思います。みんなに2つ贈り物をします。1つは君たち自身がもらってください。もう1つは与えることのために使ってください。

困難な時だからこそ、分かち合いやお互いを思い合うこと、そして与えることがかつてないほど求められています。私たちのコミュニティーは君たちを必要としています。君たちの寛大な心をこれまで以上に必要としています」と訴えかけた。

ヘイルさんは「あっちにたくさんの封筒を積んだトラックを用意しました。2枚ずつ配ります。1枚には『贈り物(Gift)』、もう1枚には『贈り物(Giving)』と書いてあります。『贈り物(Gift)』は妻と私から君たちへのプレゼント、『贈り物(Giving)』は君たちが誰かに与えるためのプレゼントです。誰かのために使ってください。支援方法を熟知した団体に寄付するというのもありです。人に与えることの喜びを分かち合ってください。卒業おめでとう!」と締め括った。

1人ずつに500ドルが入った封筒2枚、あわせて1000ドルの現金が配られることがアナウンスされると、会場からは大きな歓声と拍手が起こった。

口を大きく開けて、驚きを隠せない卒業生もいた。

CBSニュースによると、ヘイルさんが卒業生にこのような贈り物をするのは今回が初めてではない。

2023年にはマサチューセッツ大ボストン校の卒業生2523人に1000ドルずつ贈った。2021年にはクインシー・カレッジの卒業生230人にも同額をプレゼントしている。