楽天モバイルが、5月2日に新たな割引プログラムとして「最強こどもプログラム」を発表し、提供を始めた。12歳以下のユーザーを対象に、毎月のデータ量が3GB以下なら440ポイントを、3GB超過月は110ポイントを満13歳になる前の月まで毎月還元する。子ども向けの端末はあえて用意せず、楽天モバイル回線に対応する端末で利用可能にした。あくまでも割引プログラムという建て付けで“ワンプラン”を貫き、スマートフォンに抵抗を持つ保護者に対して、分かりやすさ重視で訴求したい考えだ。

 最強こどもプログラムは、同社が2月から提供している、家族の基本料金から毎月110円を割り引く「最強家族プログラム」と併用できる。これにより3GB以内の場合は月額実質528円(税込み、以下同)となる。同じ条件でデータ3GB超〜20GB未満は月額実質1958円、データ20GB超〜無制限は月額実質3058円になる。保護者が携帯電話料金の負担を減らし、子どもにスマホデビューをさせやすくした、というのが楽天モバイルのアピールポイントだ。

 13歳から22歳までは毎月110ポイントを還元する「最強青春プログラム」を自動適用できるため、13歳になったからという理由で割引が一切受けられなくなる、ということはない。最強青春プログラムの適用年齢は5月2日以降「0歳〜22歳」から「13歳〜22歳」に変更されるが、ユーザーでの手続きは不要だ。12歳以下で最強青春プログラムを利用している場合は、5月2日から最強こどもプログラムに自動移行される。

 例えば、5月2日が誕生日の子どもなら、13歳の誕生日前月までの12歳11カ月(4月)まで、毎月、最強こどもプログラムが適用されることになる。先にも述べた通り、13歳になったタイミングでは最強青春プログラムへ自動移行となり、23歳になるまで引き続き毎月110ポイントの還元を受けられる。

●ターゲットはα世代 「基本的人権であるスマホ」デビューを狙う背景

 最強こどもプログラムは、ネーミングに「最強」と付いていることから、分かりやすさ重視の割引プログラムであることが見て取れる。まずは最強家族プログラム、次に最強青春プログラム、そして今回発表の最強こどもプログラムへと続いている。何が最強なのかという議論はあるものの、統一感があり一目で誰向けのプログラムなのかが明確になっている。

 マーケティング企画本部で本部長を務める中村礼博氏は、最強家族プログラム、最強青春プログラム、ネットワーク品質の改善、キャンペーンなど、多様な施策によって、「4月3日時点での契約数が650万回線を突破した」と手応えを話す。さらに、「同日以降も順調に契約数が増えた」とした上で、「700万突破というのも、そう遠くない時期に発表できるだろう」と意気込む。

 この流れで行けば「シニア」向けの割引プログラムがあっても不思議ではないが、5月2日の発表会では具体的な言及はなかった。では、なぜ楽天モバイルは子どもに目を向けたのだろうか? 同氏は、2010年代序盤から2020年代中盤にかけて生まれた、α世代を例に説明する。

 「2010年頃からコミュニケーションもちろんのこと、インターネット上の世界、ブラウジング、買い物、動画、ゲームなどといった生活のあらゆる場面において、スマホが活用される時代になった」と前置きした同氏は、「α世代が活躍していくためには、スマホをどう使いこなし、進化とどう向き合っていくのか、世界とどうコミュニケーションしていくのか、というのが非常に重要になってくる」と続ける。

 一方で、α世代のスマホ所有率は、それほど高くないというのが現状だという。東京都の調査によると、小学校1年生〜3年生でスマホを所有しているのは27.2%、小学校4年〜6年生でも43%と半数を超えてない。

 子どものスマホ所有率が伸び悩む理由に「SNSでのトラブルに巻き込まれる」「子どものスマホ代にお金がかかる」などが挙がるという。逆に子どもにスマホを持たせるメリットは何か。「GPSで子どもの居場所が確認できる」ことや。「緊急時災害時に連絡が取れる」こと、子どもとのコミュニケーションが増えた」こと、「学習アプリを活用するようになった」こと、「ITリテラシーが身についた」ことなどという声もあるという。

 楽天モバイルは「今後、日本がさらに発展していくため、日本が世界をリードしていくため、誰でも手軽にスマートフォンを持てる社会を作りたい」(同氏)という思いから、子ども向けの割引プログラムを設計したという。

 「スマホは家族、友人との連絡、決済語学、 AI学習、買い物、医療娯楽あらゆるサービスの入り口」(同氏)になっている。それゆえに同氏はスマホを「基本的人権である」と表現する。基本的人権はその言葉の通り、「人が持つ基本的な権利」だが、権利をスマホに置き換えて理解すれば、「誰でも当たり前のように持てるスマホ」は「1人の人間はもちろん、家族や社会の必需品である」と訴えたいのだろう。

●3GBを上限に利用をストップすることはできない

 今回の発表から、子どもからその保護者まで、家族をまるっと楽天モバイルに取り込みたい、という意図も読み取れる。ポイントはやはりお得感。繰り返しになるが、最強こどもプログラムと最強家族プログラムの併用で、子どものデータ利用量を3GB以内に収めることさえできれば月額実質528円で済む。保護者の中には出費を抑えたいとの理由から、「子どものスマホ利用を制限したい」と考える人もいるだろうが、中村氏は「現状、3GBを上限に利用を止める機能はない」としつつも、「今後の課題」との認識を示した。

 楽天モバイルは、青春プログラムを先んじて提供したことで、「子どものデータ利用量、ユーザーの声が分かった他、市場調査を行った結果、データは使わないので、安くしてほしい、という声が寄せられた」(同氏)としている。最強こどもプログラムは、その要望に応えられるという。

 割引の対象が12歳以下となっている理由については、利用者が小学生かどうかという点が肝になっているようだ。同氏によると、「中学1年生になる12〜13歳、高校1年生になる15〜16歳では、データ利用量が上がっていく傾向にある」ことから、「今回の最強子どもプログラムでは12歳、小学生をターゲットとした」という。

 また、18歳未満のユーザーは月額330円の「あんしんコントロール by i-フィルター」の契約が必要となっている。「青少年インターネット環境整備法という法律で、18歳未満の人によるフィルタリングサービスの利用が義務付けられている」ためだが、「保護者(親権者)から不要であるという申し出があれば」、オプションを外すことができる。

 なお、「子どもに安心してスマホを利用してほしい」という需要に、楽天モバイルが応えるためにはSIM/eSIMの再発行方法の見直しも迫られるはずだ。楽天モバイルのeSIMについては、不正に利用される事案が発覚。ITmedia Mobileがこの件を報じたところ、不安の声が多く見られた。

 広報は「現時点で、eSIM再発行時の本人様確認にeKYCは導入していないが、楽天モバイルに登録されたメールアドレスにワンタイムパスワードを送信する二段階認証を採用している」とした上で、「不正なWebサイト(フィッシングサイト)などを通じて、第三者が利用者の楽天IDとパスワードを不正に入手した場合に備えて、昨今eSIM再発行手続きを行った人に対しては、楽天モバイルから確認の連絡をする場合や、eSIMの再発行を保留する場合がある」としている他、「新たな対策の導入を検討している」と明かした。