自分のストレスを解消するために、ささいなことで妻に文句を言いたがるモラハラ夫は少なくありません。特に食事や掃除などの家事は一番文句をつけやすいところですよね。今回は食事の支度をめぐって、モラハラ夫に言いがかりをつけられた経験のある私の知人Sさんに聞いたお話です。

すぐ文句を言う夫

Sさんは当時結婚3年目。夫は、まだ恋人同士だった頃は優しかったのですが、結婚してSさんが家庭に入った瞬間にモラハラ夫に変貌しました。

「俺の稼ぎで暮らしているくせに」「何もできないならせめて家事は完璧にしろ」などと、モラハラ夫の教科書のようなセリフを吐く夫。

それでもSさんは特に口ごたえをすることなく、じっと耐えていました。

もともと夫は気が小さく、外では人にきつくものを言えないタイプの性格であるため、せめて家の中では自分が稼ぎ頭だと威張っていたいのだろうとSさんは思っていたのです。

「おはよう、朝ごはんできてますよ」
「何が朝飯だ。俺は忙しいんだ、朝飯なんか食ってる暇はない! 朝飯なんか見ると気分が悪くなる、早く片付けてコーヒーを出せ!」
朝からそんな調子で、夫はSさんが淹れたコーヒーだけを口にして出社します。

最近は特に仕事が忙しいらしく、いつもより早い時間に家を出ることが続いていました。

いらないと言ったのに……

数日後、Sさんはいつものように朝のコーヒーを準備していました。すると起きてきた夫は、テーブルの上をチラッとみてこう言ったのです。

「おい! なんで朝飯を用意してないんだ」
「え、朝ごはんいらないんじゃ」
「朝飯も用意できないのか、うちの役立たずな嫁は。もういい、外で食べる」
夫はそう言って、コーヒーも飲まずに家を出て行ってしまいました。

「はあ……、一体どうしろっていうのよ」
Sさんは頭を抱えました。

それからというもの、夫はSさんが朝食を用意すれば「いらない」と言い、用意しないでいれば「朝食はどうした」と言ってくるように。

まるで嫌がらせのようにその日の気分で文句を言う夫に、そろそろSさんの堪忍袋の緒も限界を迎えてしまいました。

モラハラ夫に制裁!

そしてある朝、いつものように夫は自室から出て来て、何も用意されていないテーブルの上を確認してから言いました。
「おい、嫁なら朝飯くらい用意しろよ。一家の大黒柱を腹が減ったまま仕事に行かせるなんて嫁失格だぞ」
Sさんはそう言われてすぐに、電子レンジを開けました。
「用意、できてますよ」
そこにあったのは、てんこ盛りに盛られた、熱々のカレーでした。
「お腹が空いたまま仕事に行かせるなんて嫁失格ですもんね? ほら、満腹になるまで食べてくださいよ。一家の大黒柱さん」
テーブルの上にドンッとカレー皿を置き、Sさんは無表情で夫に言いました。
「いや、朝からカレーはちょっと重いだろ」
いつもと様子の違うSさんに、本当は小心者の夫はうろたえながら席につきます。
「お腹、空いてるんでしょ? どうぞ召し上がれ」
Sさんは能面のような表情のまま、夫がカレーを口に運ぶまでじっと見つめています。

「ど、どうしたんだよ急に、って、辛いなこのカレー!」
「……」
いつもは黙って言うことを聞いてくれるはずのSさんの、無言の圧力に耐えられず、夫は汗をかきながら激辛カレーを口に運び続けます。
「おかわりはいかがですか? お腹空いたまま仕事に行かせるのは嫁失格なので用意してますよ」
「いや、もういい。なあ本当にその顔やめてくれよ! 怖いんだよ 」
夫はSさんの無表情が恐ろしいのか、懇願するように言いました。しかしSさんはずっと無表情のまま。
「スプーンが止まってますよ。お腹空いたまま仕事に行かせるのは嫁失格なんですよね。なら完食してください」
「わ、わかったよ。でももう」
「お腹空いたまま仕事に行かせるのは」
「わかったって! 食べるから!」
夫が食べるのをやめようとするたびにSさんが「お腹が空いたまま仕事に行かせるのは嫁失格」と言い続けるので、結局夫は激辛カレーを完食して、汗だくのまま出社することに。

翌日も朝になるとSさんがカレーを用意したため、夫は「俺が悪かった」と謝罪。反省の様子を見せていたので、Sさんは再び和食の朝食を出すようになったそうです。

実はモラハラをする人には、小心者が多いといいます。外では晴らせない鬱憤があるのかもしれませんが、それを家で晴らそうとするのはやめて欲しいですね。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子