スマートホーム製品において、ネットワークカメラを販売しているメーカーは数多く存在するが、ドアベルをラインアップしているメーカーは少ない。ドアベルは高い防水性や頑丈さなどを求められることに加えて、ベルが押されてからの遅延が大きいとドアベルとしての役割を果たさないという、性能面の理由もあるだろう。

 そうしたことから、ドアベルを用意しているということは、そうした設計面および性能面において、メーカー側に一定の自信があるということが考えられる。今回はArlo Technologiesがリリースした「ビデオドアベル 2K」(AVD4001-100JPS)を、以前紹介したAmazonの「Ring Battery Doorbell Plus」と比べつつレビューする。

●スティック状の縦長ボディーを採用 バッテリーは着脱不可

 まずは外見からチェックしよう。本体は全長10cm強のスティック状の縦長ボディーで、Googleの「Google Nest Doorbell」に似た、白と黒を基調にしたデザインだ。他社の製品に比べると、曲面が多いのが特徴といえる。

 上部にはカメラ、下部にはボタンが搭載されており、ボタンを押すことによって、アラートがスマホに通知され、カメラの映像を確認できるようになる。解像度は1944×1944ピクセルということで、アスペクト比は1:1だ。これは通常のカメラとは異なり、足元まで見える必要があるためで、これについては後ほど詳しく紹介する。

 設計上の特徴としては、バッテリーが着脱不可で、本体ごと取り外して充電しなくてはいけないことが挙げられる。バッテリーが着脱可能な製品であれば、複数のバッテリーを手元に用意しておくことでダウンタイムをゼロにできるのだが、本製品の場合は、充電時にダウンタイムがどうしても発生してしまう。

 もちろん付属のケーブルを使って背面から配線を行えばこの問題は解決するが、日本の住宅事情でこれが行えるケースはあまり多くないはずで、バッテリーの着脱に対応するRingのドアベルと比べると設置性はやや不利だ。

 パッケージには本体やUSB Type-Cケーブル、有線配線用のケーブルに加えて、壁面固定用のネジなど一式が付属する。また左右方向にわずかに角度を変えるためのベースが付属するなど、付属品の顔ぶれは、他社のドアベルとおおむね同様だ。

●定型での返答を可能にする日本語メッセージを複数内蔵

 セットアップの手順については、前回までに紹介した屋内カメラおよび屋外カメラと大きくは変わらない。まずは必要最小限な項目に絞ってセットアップを行って使えるようにしてから設置し、完了後に必要に応じて詳細設定を行うという流れだ。

 なお、本製品には有料プラン「Arlo Secure」の無料トライアルが付属している。セットアップの最後にこれらの案内が表示されるため、「開始する」をタップしよう。無料トライアルの有効期限は、設定画面に表示されるので、別途確認しておくとよい。

 以上で使えるようになったのだが、まず戸惑うのはボタンの所在だ。このドアベル、ボディーの下部にボタンが搭載されているのだが、前面がほぼ真っ黒ということもあり、どの部分を押せばよいのか、初見ではいまひとつ分かりにくい。

 そのためか、本製品はカメラに誰かが近づくと、ボタンがゆっくりと点滅する仕組みを採用している。「ここを押してください」という意味のようなのだが、本製品を知らないユーザーからすると、何らかの警告のようにも感じられ、押してよいものか逆に迷ってしまう。

 ドアベルのどこを押せばよいのかを、見た目に判別しづらい問題は本製品に限ったことではないが、ボタン位置をLEDの点滅で知らせるのは、個人的にはあまりよい解決策とは思えない。「ここを押してください」とラベルを貼るなどのアナログな解決策の方が効果は高いのは明らかで、改善の余地はあるように感じられる。

 一方で本製品がドアベルとして優秀なのは、来客に対する、定型応答の音声(クイック応答メッセージ)を備えており、タップするだけで再生できることだ。具体的には以下の5つがある。

・今は手が離せません。ありがとうございます!

・すぐに行きます。

・何か御用でしょうか?

・こんにちは!荷物は外に置いたままで構いません。ありがとうございます!

・恐縮ですが興味がないので、お引き取りください。

 Ringのドアベルでの同等機能(クイック応答)は発売当初は日本語化されておらず、2023年の秋にようやく日本語に対応したところだが、本製品は最初から日本語化されているので扱いやすい。音声は女性の声のみのようだが、将来的に男性など別の音声への切り替えにも対応すれば、なお盤石になるだろう。

 また不在時に訪問者がメッセージを残せるボイスメール機能も用意されている。ドアベルを押して20秒応答がないと、訪問者がさながら留守電のようにメッセージを吹き込めるという機能だ。30秒という制限が分かりにくいのと、果たして初見で使い方が理解できるかという問題はあるが、訪問頻度が高い知人との間であれば活用法もあるだろう。

●カメラ回りの設定はArloの屋内カメラと屋外カメラに準ずる

 これ以外のカメラ回りを中心とした機能は、前回までに紹介した屋内カメラおよび屋外カメラに準じており、その中にいくつかドアベル独自の画面があるという構成になっている。以下、スクリーンショットで紹介する。

●真下に置かれた「置き配」の荷物はきちんと見える?

 さて最近のドアベルは、置き配への対応がトレンドとなっている。従来よりも広角のレンズをドアベルに搭載することによって、ドアベルの真下に置いた荷物であっても視認できるようにするという、ハードウェア面での工夫が1つ。また荷物が置かれたことを検知して「荷物」タグをつけ、アプリに通知するという、ソフトウェア側の工夫もある。

 特にRingのドアベルは、わざわざこの置き配対応のためだけに、垂直方向の視野角が150度と広く足元まで映る新モデルを投入するなど、非常に力を入れている。自社の配送便の効率を上げたいというAmazonならではの事情もあるだろうが、ホットな機能なのは間違いない。

 では本製品は、この置き配対応という観点で見た場合はどうだろうか。結論から言うと、あまり置き配との相性はよくないというのが、試用した上での感想だ。

 まずレンズについては、Ringのドアベル(旧モデルのRing Video Doorbell 4)に近く、足元に荷物を置かれると死角に入ってしまう。前回レビューしたRingのドアベル(新モデル)で使ったのと同じ大きさの段ボールを置いて実験してみたが、ドアにぴったりつけた状態では、荷物の端すら映らない。

●タグ付けはサポートするものの……

 もう1つのタグ付けはどうだろうか。ホームセキュリティ向けのカメラやドアベルでは、被写体が人物なのか乗り物なのか、あるいは荷物かといったタグづけをして通知する機能を備えており、Arloもこの機能に対応している。

 ただし荷物を検出する機能については、全てのカメラやドアベルが同時に使うことはできず、アカウント1つに1台までという制限がある。しかもヘルプ画面を見る限り、ドアベルではなく屋外カメラのための機能とみなされているようで、設置場所は高さ3mで、ドアまでの通路と荷物が置かれる玄関先がよく映る場所に設置するよう指示されている。ドアベルではとても対応できない。

 結果的にこの荷物検知の機能を使うには、ドアベル以外にもう1つ、屋外カメラを玄関に設置しなくてはいけなくなる。確かにそれだと検知の確実性は上がるだろうが、コスト面では不利だ。今はまだ過渡期なのかもしれないが、ドアベルだけで完結する方向を目指してほしい。

●価格競争力も十分 スマートドアベル選びの候補に入る製品

 以上ざっと見てきたが、一通りの機能はそろっている上、日本語化されたクイック応答メッセージなど見るべき機能はある。また映像の遅延も、以前紹介した屋内カメラのように3秒前後かかるといったこともなく、1〜2秒程度にとどめられている。置き配回りの機能だけが、やや残念な印象だ。

 価格については税込み2万1980円と、2万円台半ばのRingやGoogle Nestのドアベルと比べても競争力はある。置き配関連の機能が特に不要ならば、という条件はつくものの、機能的には十分で、スマート機能を備えたドアベル選びの候補に入ってくる製品と言えそうだ。