ルイス・ハミルトンは、今季限りでメルセデスを離れ、来季からフェラーリに移籍することを決めた。かつてフェラーリに在籍した経験のあるアラン・プロストは、この移籍について多くの疑問を抱いたことを認めた。

 プロストは1989年にマクラーレン・ホンダMP4/5を駆ってチャンピオンを獲得。しかし同年限りでマクラーレンを離れ、1990年にフェラーリへと加入した。ただそのフェラーリとの関係もうまくいかず、1991年の最終戦を待たずに解雇。その結果、翌1992年は1年休養し、1993年にウイリアムズから復帰を果たすとあっさりとチャンピオンを獲り、その年限りで現役を退くことになった。

 そのプロストは、自身と同じように他陣営からフェラーリ入りするハミルトンについて、その妥当性を疑問視して憚らない。

「彼の決断は理解できる。彼のような年齢(39歳)になって、メルセデスのようなチームにいるのに2年間勝てておらず、なかなか優勝争いに復帰できない時には、『よし、何か違うことを試してみたらどうだろう?』と言いたくなるのは当然だ」

 プロストはスポーツ・イラストレイティッドに寄稿したコラムでそう説明した。

「レッドブルに行けるチャンスがあったかどうか分からない。でも少なくとも、マックス(フェルスタッペン)と一緒に走ることはなかっただろう。それは不可能なことだ」

「その次にフェラーリという選択肢があった。2026年にはレギュレーション変更がある。それまでにチームに定着するには、あと1年、2025年シーズンしか残っていないんだ。2026年以降、彼は42歳、場合によっては43歳になる。それはまた別の話だが、彼が走るのを辞めたくないのは理解できる。ただ問題は、それが良い決断なのかどうかだ。良い選択だったのだろうか……フェラーリに聞いてみたいところだね」

 プロストは、ハミルトンとフェラーリのコラボレーションの成否を決める基準は、複数あると考えている。

「F1にとってはいいことだと思うよ。誰もが注目するだろうからね」

 そうプロストは言う。

「しかし、彼はフェラーリでモチベーションを見つけることができるだろうか?」

「もちろんその可能性はある。フェラーリが好調であれば、彼は再びモチベーションを取り戻すことができるだろう。そしてシャルル(ルクレール)との関係だけではなく、フェラーリの雰囲気も重要だ」

 フェラーリの雰囲気を経験したことのあるプロストはそう語った。

「彼は長くイギリスに拠点を置くメルセデスで働き、自分のやり方を通してきた。そこから異なるプレッシャー、異なるやり方のイタリアのチームに行くことになる。考え方を変える必要がある」

「メディアからのプレッシャーもある。そこに溶け込むのは、それほど簡単ではないと思うよ」