5月11日に開催されるWEC(世界耐久選手権)第3戦スパ6時間レースのエントリーリストが発表された。

 この中で、注目すべきはハイパーカークラスのアルピーヌ35号車のドライバーとして、フェルディナンド・ハプスブルクの名前があることだ。

 ハプスブルクは3月末にアラゴンで行なわれたプライベートテストで大クラッシュし、腰椎を2ヵ所骨折。今は医師からレース復帰の許可を待っている段階だ。

 アルピーヌのチームを運営するシグナテックのボスであるフィリップ・シノーは、「今週、フェルディから良いニュースがあることを期待している」と語った。

「できるだけ早く、我々と合流できることを願っている。彼の環境は、個人的な面でも、医療的な面でもとても良い」

 WEC第2戦が開催されたイモラで、ベルギーでハプスブルクが復帰する可能性について尋ねられ、シノーは決断が間近に迫っていることを示唆していた。

「今週末にはもっとはっきりした見解が得られるだろう」と彼は述べた。

 エントリーリストに名前があるからといって、ハプスブルクが必ずしもスパでアルピーヌのマシンに乗るとは限らない。

 スパの1週間前にはヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)のポール・リカール戦があるが、そこでハプスブルクがドライブする見込みはない。

 今月初めにバルセロナで開催されたELMS開幕戦では、WECではチームメイトであるポール-ループ・シャタンがハプスブルクに代わってクール・レーシングのオレカLMP2に乗り込んだ。先週末のWECイモラ6時間では、アルピーヌの公式リザーブドライバーであるジュール・グーノンが代役を務めた。

 シノーは、ハプスブルクの事故はドライバーのミスではなく、マシンの問題によるものだと認めた。

「我々は調査を続けているが、技術的な問題があった。今はすべてがコントロール下だ。このアクシデントの後、我々は懸命に取り組んできた。今は問題ない」

 なおWECスパの週末は、フォーミュラEのベルリンE-Prixも開催されるため、両カテゴリーに参戦しているドライバー中心にラインアップ変更がある。プジョーのジャン-エリック・ベルニュとストフェル・バンドーンはWECスパを欠場し、フォーミュラEに出場。プジョーは93号車をニコ・ミュラーとミケル・イェンセン、94号車をポール・ディ・レスタとロイック・デュバルのドライバーふたり体制でエントリーしている。

 LMGT3クラスのエントリーリストには、日本のファンにもお馴染みの名前が確認できる。レクサスRC F GT3を走らせるASPの78号車のドライバーとして、宮田莉朋がエントリーしているのだ。

 宮田はフランス人ブロンズドライバーのアーノルド・ロビンと、同チームで2023年のGTワールドチャレンジ・ヨーロッパを制したティムール・ボグスラフスキーがチームメイトとなる。

 宮田はこれまでの2戦でドライブしていたケルビン・ヴァン・デル・リンデに代わってのエントリーだ。ヴァン・デル・リンデはニコ・ミューラーの代役として、アプト・クプラからフォーミュラEを走るためだ。

 宮田にとっては、ピンチヒッターとして急きょケッセル・レーシングのフェラーリ488 GTE Evoをドライブした昨年のWEC富士以来のWEC参戦となる。

 宮田は今季、FIA F2選手権とELMSに参戦しており、ELMS開幕戦ではいきなりの優勝を飾った。その他にもIMSAのデイトナ24時間レースに出場するなど世界を舞台に挑戦を続けている。

 F2では7月末にスパ・フランコルシャンを走る予定だが、ひとまずWECで先にスパを走れるという点でも、宮田にとって有益な経験になるだろう。